現代日本におけるペットの社会学
2022年12月年〜
この研究プロジェクトでは、日本社会におけるペットの定着と役割の変化に焦点をあてています。
子供よりペットの方が多い:
1990年以降、日本は少子化が進み、また新型コロナ感染症(Covid-19)によって状況はさらに悪化しています。2021年、日本の家庭で飼われている犬は700万匹、猫は900万匹に達し、これは人口の11.3%が犬を、9.8%が猫を飼っていることになります。同年、日本で生まれた赤ちゃんは811,604人と過去最低でしたが、その一方で、ペットの新規飼育数は過去最高となり、猫の購入や里親募集は合計489,000頭、犬は397,000頭になりました。猫489,000匹、犬397,000匹、合計886,000匹のペットがこの年に生まれた赤ちゃんの数を上回ったということになりました。
方法論
この研究プロジェクトは、マルチメソッドアプローチを採用し、多くのソースからのデータを使用しています。
- 統計データによる定量的分析
- ペット保護者、動物福祉活動家、ペットビジネス関係者、行政関係者への定性的インタビュー
- 里親募集イベント、ペットショップ、ペットカフェ、ペット関連イベントなどでの参加者観察
多角的研究
社会の中のペットの研究は、ヒューマン・アニマルスタディース、家族社会学、社会運動研究、人口学、法律学、都市社会学、さらには幸福とウエルビーイングの社会学の分野と結びついています。
このペットの研究は、いくつかの角度から取り上げています:
- ペットのいる家庭を考える
- 高齢化する日本とペット
- 大衆文化やメディアにおけるペット
- ペットと動物愛護団体
- ペット経済
- ペットと災害時
- ペットと政治・法制度の変化
- ペットと幸福
- ペットから見える日本の都市部と農村部の格差
初発見
本プロジェクトでは、過去10年間に日本ではペットの飼育数が増加し、ペット市場やペットカフェが活況を呈し、街中でペットが受け入れられるようになったことを紹介しています。動物愛護に対する社会的な意識も高まり、今ではほとんどの政党がマニフェストに動物愛護を掲げています。また、近年の法改正により、ペットの役割はますます大きくなっています。
さらに、日本人の未婚率が上昇する中、犬を飼っている人の年齢層が20歳から29歳が最も多いというのもうなずけます。その一方で、60歳以上の日本人は、高齢者のペット飼育と幸福の間に正の相関関係があることを示す研究結果が出ているにもかかわらず、動物保護団体からペットを引き取ることを断られるケースが多くあります。
このように、都市部と農村部では、ペット飼育の規範や動物愛護の理解に大きな違いがありますが、学術的には、このような規範の分断にあまり注意が払われていないのが現状です。また、メンタルヘルスの問題が社会的に認知されつつある一方で、多頭飼育の問題も広く認識されつつあることも重要な点といえます。