企業統治システムの比較
1969年12月年 - 2005年10月
ドイツ・日本研究所 (DIJ) と 日本投資環境研究所 (J-IRIS) の共同研究
何がマネージャーにモチベーションを与えるのか、誰がマネージャーを管理するのか。いかなる経済システムにおいても、マネージメントと所有を分けるとこのような問いが投げかけられる。しかしながら、いかにそれが早く表面化するかという具体性は実にまちまちである。米英国型システムでは従来から株主の利益保持に重きが置かれてきた一方で、ドイツと日本は「利害関係者中心」と言われてきた。ところがワールドコムならびにエンロンを巡るスキャンダルが発覚するや、しばしば優位性を公言してはばからなかったアングロサクソンモデルに疑問が呈されるようになったのである。しかし、例えば日本の銀行の危機的状況、あるいはドイツで起こった未だに異常と言われるヴォダフォンのマンネスマンを巡る買収劇が示すように、ドイツと日本のシステムが完璧だというわけでは決してない。
こうした背景の中、改革しようとする努力がはっきりと見て取れるということだけは明らかである。例えば、米国のサーべンス・オクスレー法 (Sarbanes Oxley Act)、ドイツ企業統治法 (Deutsche Corporate Governance Kodex) がそれを示している。日本も企業統治システムの改革に直面している。昨年行われた商法改正はその第一歩に過ぎない。
そこで本共同プロジェクトがスタートした。みずほ銀行の子会社である J-IRIS で企業統治研究を率いる関・孝哉氏と共に、アンドレアス・メルケ はドイツの二つの企業統治問題に関する政府諮問委員会 (Regierungskommissionen Corporate Governance) の委員にヒアリング調査を行った。学識者 (フランクフルト大学 バウムス教授、独法務省ザイベルト教授、ベルリン工科大学 フォン・ヴェルダー教授)、さらに実務経験者 (ティュッセンクルップ社の代表監査役ゲルハルト・クロンメ博士、ドイツ銀行の現代表監査役 ロルフ E.・ブロイヤー博士、インタビュー当時のドイツ銀行代表監査役ヒルマー・コッパー氏、その他) から問題が提起され、これら提起された問題は直接日本の経済産業省の報告書 (下記を参照) に反映された。
本プロジェクトのもう一つの成果は、「ドイツ企業統治法」の日本語訳をホームページで近々公開することを独政府諮問委員会に承諾させたことである。さらに両研究所では、2003 年秋に「企業統治の比較」をテーマに国際シンポジウムを開催することを計画している。
本プロジェクト「企業統治システムの比較」の内容は、プロジェクト「若い企業における企業統治」(DIJ と明治大学大学院商学研究科の共同プロジェクト) と関連するものである。
共同研究協力者
コーポレート・ガバナンス調査研究 首席研究員 関・孝哉
(e-mail: seki@j-iris.com
web: http://www.j-iris.com/english/corporategovernance.html )