お化けと近代化―不思議と科学的思考の間で
1997年7月31日 - 1969年12月31日
第2回目の文化研究ワークショップは、明治・大正時代の日本における近代化および反近代化の論議を取り上げた。
近代日本の世紀末前後には不思議な物をめぐって数々の注目すべき論争が闘わされた。学者や作家たちが迷信と近代科学的思考について意見を闘わせたのだが、大きく分けるとそこからに二つの側面を見てとることができる。一つは古い考え方を乗り越えようとする志向であり、もう一つは新しい考えを優先することに疑問を持っていた。一方でその時代に、「お化け」の再来現象がみられた。それはもっと大きな文脈で捉えてみれば神秘的、幻想的なものの再評価というべきものである。お化けのディスクールは当時の知識人の活動の一部分をなしていたが、彼らは近代化によって失われた「故郷」を取り戻すことを望んでいた。それはまさに近代日本におけるノスタルジーのありようを示すものであった。
今日、日本の研究者たちは再び「お化け」というテーマに注目している。それは、現在のオカルトブームとも大いに関係しているが、明治・大正時代のお化けのディスクールを再評価することは、日本の近代化の諸問題をよりよく理解できるという真の理由がある。「お化けと近代化」というテーマを問うことにより、近代日本の主な論点、つまり東洋と西洋の伝統の出会い、近代的な科学思想の発展、近代自我の発展、日本のアイデンティティーの模索などが明らかになることと思う。
今回の発表者と発表テーマは次のとおりである。
- 一柳 廣考(横浜国立大学):
「〈こっくりさん〉のディスクール」
- 横山 泰子(江戸東京博物館):
「怪を語る二様の言葉?井上円了と柳田国男」
- 安松 みゆき(立教大学):
「西洋人の日本のお化けへの憧れ:近代女流画家 Cäcilie Graf-Pfaff の場合」
- ゲーパルト・リゼット (DIJ, Lisette Gebhardt):
「神経質とノスタルジア:近代の作家とお化け」