場所
Bonn
Aging and Social Policy - A German-Japanese Comparison (高齢化と社会保障- 日独比較)
1997年10月27日
1950年、日本の高齢人口(65歳以上)の割合は、5%以下であったが、1997年には、ドイツと同水準の15.5%に至った。この結果、日本は数年前のドイツと同様に介護保険の導入を決定した。この状況を踏まえて、「家族を例としての現代日本社会の変化」プロジェクトチームは、人口問題とその社会保障政策の対応に日本とドイツの共通しているところ、あるいは異なっているところを探った。このシンポジウムはフリードリッヒ・エーベルト財団の援助を受け、企画・構成は研究員のR.リュツェラーとC. オバーレンダーが当たった。
シンポジウムは三つの部門に分けて進められた。K. Fleischhauser 先生(元ボン大学学長)の挨拶の後、第一パネルの「高齢化の人口学:ニーズ中心の社会保障政策の観点から」には、小島宏先生(国立社会保障・人口問題研究所)が、日本に戦前から引き継がれた家族制度が、どれほど高齢者の介護に貢献してきたかという研究を発表した。
小島先生は、最近の世帯データーを使って、今まで長男は両親と一緒に住む傾向が強かったが、将来は弱まるだろうと指摘した。これに対して、ドイツではすでに家族のメンバーが、介護にあまり参加していない。K. Veith先生(ドイツ連邦地誌・空間整備研究所、ボン)は、ある程度安定していた高齢者の生活基盤が、将来実質的な減収、あるいは地域の比較貧困化によって変ってくるだろうと説明した。
C. Hoehn 先生(ドイツ連邦人口研究所、ヴィースバーデン)は、この二つの発表に対するコメントを行った。
第二パネルの「社会保障政策とニーズ中心の介護政策」では、日本での介護保険の導入準備に、参議院厚生委員会調査室客員調査員として参加している栃本一三郎先生(上智大学)が、日本の介護保険の前史と将来の介護保険の組織に関する説明をした。G.Naegele 先生(老人学研究所、ドルトムント)は、ドイツの介護保険の構造と、現在までの導入過程で積み重ねた経験を発表した。T. Klie 先生(プロテスタント専門学校、フライブルク)は両国の社会保障制度の共通点と異なっている点を強調して、将来の問題点を指摘した。
シンポジウムの最後は、木村利人先生(早稲田大学)の介護政策の倫理的な問題の発表に続いて、倫理問題を中心とした全体討論が行われた。特にコンピューターによる介護のニーズのアセスメントという日本の計画に対して、活発な発言が相次いだ。ドイツ人、日本人ともに参加者の多くが、コンピューターの利用は非人間的であると批判的であったが、日本人参加者の一部はコンピューターによるアセスメントの公平性を高く評価した。
このシンポジウムの発表に幾つか個別の論文を加えて、1998年春にドイツ-日本研究所の単行本として出版する予定である。