日本語-ドイツ語/ドイツ語-日本語翻訳についてÜbersetzungssymposium deutsch-japanisch/japanisch-deutsch
1998年11月3日 - 1998年11月4日
日独双方の翻訳はますます増加の状況にある。しかし翻訳の問題にスポットを当て、システマティックに考察する機会は希であった。今回開催されるシンポジウムは、日本語とドイツ語の両方向からの翻訳について幅広く考える第一歩となるだろう。言語系統的な視点、文化社会的な見地、経済的な視角から、原則的に文学の翻訳を基点としてプログラムを展開して行く。翻訳という作業は、それぞれの特徴的なファクターに大きく左右される基本的な仲介の仕事である。しかしその事実は知られていない場合や意識されていない場合がほとんどだ。これらのファクターを追って行くことは、それぞれの社会の独自性を引き出すことでもある。
良い翻訳とはいったいどのようなものをいうのか。良い翻訳を生むために克服しなければならない言語上の問題、文化的な問題とは。作家、出版社、教育者、ドイツ語・文学者、日本学者、ジャーナリストの役割はどうだろう。訳すという行為は芸術なのか、スキルなのか、学問なのか。翻訳を学ぶことは可能なのだろうか。
このシンポジウムでは、翻訳者、ドイツ語・文学者、日本学者、教育者、出版社、ジャーナリストを交え、講演、パネルディスカッション、朗読会を通じて翻訳について考える。
<翻訳賞>
プログラムを飾るイヴェントとして、11月3日の「文化の日」に翻訳賞の授与式を行なう。同賞では、文学・実用書を問わず、ドイツ語から日本語への優れた翻訳に対し、賞金10,000ドイツ・マルクが支給される。1999年以降は、ケルンの日本文化会館において同様の賞が日本語からドイツ語への翻訳に対して授与される。今回の日本での賞は、ドイツ大使、ならびに国際交流基金理事長によって、ケルンでの賞は日本大使とゲーテ・インスティテゥート総裁ならびにドイツ外務省文化局代表によって授与される。
プ ロ グ ラ ム
11月2日(月)
18:00 1998年度ドイツ-日本語翻訳賞作品『猫たちの森』の原作者アキフ・ピリンチ氏と翻訳者池田香代子さんを
交えての朗読会とトーク
11月3日(月)
9:00 開会の挨拶と趣旨説明
H.ベッカー(東京ドイツ文化センター)
I.日地谷-キルシュネライト(ドイツ-日本研究所)
9:30 「伝言ゲーム」-翻訳という名の藪を抜け出る道しるべ-
I.日地谷-キルシュネライト(ドイツ-日本研究所)
10:00 -休 憩-
10:30 戦後における、翻訳による日本語の変化
柳父 章(桃山学院大学)
11:15 解釈としての翻訳とは?西洋での俳句受容の問題について
E.マイ(フランクフルト大学)
12:00 -昼休み-
14:00 訳すこと、訳されること
U.クレヘェル(作家)
14:45 訳すこと、訳されること
古井 由吉(作家)
15:30 -休 憩-
16:00 言語干渉と実体
W.シュレヒト(早稲田大学)
16:45 「第三の文学」としての翻訳
井上 健(東京工業大学)
18:00 レセプション(東京ドイツ文化センター主催)とレッシング・ドイツ政府翻訳賞授与式
(ドイツ連邦共和国フランク・エルベ大使/国際交流飢饉藤井宏昭理事長)
11月4日(水)
9:00 日本のゲルマニスティクにおける翻訳の役割について
上田 浩二(筑波大学)
9:45 エロチックな対話 -日本文学の翻訳におけるフェミニズム方法-
N.リスクティン(ドイツ-日本研究所)
10:30 -休 憩-
11:00 ドイツ現代作家の日本語訳の商品化問題
保坂 一夫(東京大学)
11:45 ドイツ語圏における日本文学の編集
A.ブロックマン(ドゥモン出版社)
12:30 -昼休み-
14:00 文学翻訳時代後の翻訳状況
相澤 啓一(筑波大学)
14:45 雑誌編集者の見た現代ドイツ文学紹介
安原 顕(編集者)
15:30 -休 憩-
16:00 ドイツ文芸時評における日本文学
H.シュピーゲル(フランクフルターアルゲマイネ社)
17:00 パネルディスカッション
司 会:I.日地谷-キルシュネライト
パネラー:相澤啓一、池田香代子、上田浩二、J.ボハチェック、R.ボリンガー、J.シュタルフ、R.ヴィットカンプ
18:30 終 了