Deutsches Institut für Japanstudien nav lang search
日本語EnglishDeutsch
Deutsches Institut für Japanstudien

場所

国際連合大学本部(東京)
〒150-8925 渋谷区神宮前5丁目53-70
東京メトロ 表参道駅下車徒歩5分 (千代田線、銀座線、半蔵門線:出口B2)
またはJR渋谷駅宮益坂方面出口より徒歩8分


アクセス

登録情報

オンライン用フォーマットにご記入の上オンライン登録いただくか、またはファックス専用登録シート用いてファックスにてお申し込みください。

  • 参加費(資料および書籍代)はおひとり様3,000円です。(学生は2,000円)
  • 参加費お支払い期限は2008年9月26日とさせていただきます。以下の銀行口座にお振り込みください:
    三井住友銀行 麹町支店(218)
    口座名義:ドイツ‐ニホンケンキュウショ
    口座番号:普通 8454505

  • ご入金を確認後、参加証を発行いたします。

  • 入場には参加証が必要です。必ずお持ちください。


国際シンポジウム

シルバーマーケット現象:高齢社会におけるビジネスチャンスと企業責任

2008年10月2日 - 2008年10月4日

グローバルな規模において今回初となる本フォーラムでは、シルバーマーケット現象を解き明かし、50+(50プラス)マーケットのための技術革新、商品・サービスの開発、テクノロジーマネージメント、マーケティングとビジネスモデルの構築といったテーマに焦点を当てます。同時に、世界中で進行している高齢化へ対処するために、政策決定者、学術研究者、そして実務者が企業の責任、挑戦そして解決策について議論します。

同時通訳付き(日本語/英語)

 

 

 

 

主催:

ドイツ‐日本研究所、東京(DIJ)
担当:フローリアン コールバッハ

ハンブルク工科大学(TUHH)技術・イノべーションマネージメント研究科(TIM)
東京工業大学 21世紀プログラム インスティテューショナル技術経営学(SIMOT)

 

協力

ワールド デモグラフィック アソシエーション
インターナショナル マチュア マーケティング ネットワーク
早稲田マーケティングフォーラム
在日ドイツ商工会議所
筑波大学グローバルCOE サイバニクス:人・機械・情報系の融合複合
モノづくり推進会議
ジャーマン シニアシチズン リーグ
theMatureMarket.com

 

助成

 

(財)大林都市研究振興財団
アリアンツ生命保険株式会社
シーメンス旭メディテック株式会社
(財)村田学術振興財団
テュフ ラインランド ジャパン株式会社

 

発表

2日目          2008年10月3日 (金)

09:15-09:30
開会:開会のごあいさつと概要説明

開会:開会のごあいさつと概要説明

コンラッド オスターヴァルター(国際連合大学学長)
フロリアン クルマス(ドイツ‐日本研究所所長)
渡辺 千仭(東京工業大学教授)
コルネリウス ヘルシュタット(ハンブルクルク工科大学技術・イノべーションマネージメント研究科教授)
フローリアン コールバッハ(ドイツ‐日本研究所研究員)

09:30-11:00
基調講演セッション Ⅰ

司会:

渡辺 千仭(東京工業大学教授)

1968年東京大学工学部都市工学科卒業、1992年東京大学で博士号取得(学術博士)。1968年に通商産業省入省、以後四半世紀にわたり同省にて主として産業政策、産業技術政策、エネルギーおよび環境政策に携わり、同省工業技術院技術審議官を務める。現在は東京工業大学経営システム工学科教授、同大学元評議員。国際応用システム分析研究所(IIASA)技術顧問、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術参与、国連大学高等研究所客員教授。2004年に文部科学省21世紀COEプログラム「インスティテューショナル技術経営学 (SIMOT) 」拠点リーダーに就任、東京工業大学インスティテューショナル技術経営学研究センター長を務める。研究分野は、技術経済、技術革新論、技術政策論、インスティテューショナル・イノベーション。これらの分野で130の論文を発表している。“Institutional MOT: Co-evolutionary Dynamism of Innovation and Institution” (in M. Horlesberger, M. El-Nawawi and T. Khalil, eds., Challenges in the Management of New Technologies [World Scientific Publishing, New Jersey, 2007]); “Institutional Elasticity as a Significant Driver of IT Functionality Development” (Technological Forecasting and Social Change 71, No. 7, 2004); and “Systems Option for Sustainable Development” (Research Policy 28, No. 7, 1999).

『オーストラリア的な考え方から50+の顧客を理解する』
- スライド

ジル ウォーカー(エバーグリーン マーケティングコミュニケーション最高経営責任者、 IMMN創設メンバー、オーストラリア)

本発表ではオーストラリアにおける50+マーケットに関するさまざまなトピックを取り上げる。特定の年齢層のあいだの人口動態の傾向と分類に特に注目して、オーストラリア統計局(ABS) による人口プロフィールデータを発表する。人口データに加え、10歳ごとの年齢層における富の実態と、旅行や主要品目やサービスなどのカテゴリーごとの支出を含めた裁量支出の予想を示す。


RMIT大学の広告学修士論文’Ageism in Australian Advertising’(オーストラリアの広告における高齢者差別)の中の主要な見解も、この発表の一部に含める。その中には、より効果的にコミュニケートし、メッセージをオーディエンスと共鳴させる方法についての実践的なアドバイスが含まれる。イメージ、声のトーン、ユーモアの利用とメディアの選択について考察する。


また、最近完結したエバーグリーンレポートの要点も紹介する。これはオーストラリアの50+女性の広告に対する態度についての質的研究であるが、このレポートにより、彼女たちがなによりも健康、福利、経済的自立、そして世代間の関係を重要としていることが明らかになった。最後に発表者は、成功例とそのほかの例のケーススタディを含め、広告の事例を紹介する。この発表は、数々のアカデミックな研究成果と、マーケターと広告主への日々の実践的アドバイスを融合させたものである。

エバーグリーン マーケティング コミュニケーション最高経営責任者。同社はオーストラリアおよびニュージーランド初の、50+のよりよい理解を専門とする広告代理店である。ベビーブーム世代や高齢者を動かし共鳴できる広告を制作している。クライアントにはState Trustees, Prime Trust, Sentinel, Sancella, Kimberley Clark, Buxton Developments、Southern Cross Broadcasting等多くの一流企業がある。2003年、メルボルンのRMIT大学にてオーストラリアの広告における高齢者差別についての修士論文を完成。3500以上の広告と多数のフォーカス・グループの論評が含まれている。RMIT大学広告学修士課程講師を務める。2003年にエバーグリーンを設立する以前は、WPPグループの一部であるサドラー・アンド・ヘネシー オーストラリアのマネージング・ディレクターを務め、マッキャン・エリクソンでも国際的業務に従事した。ヘルスケア、旅行、金融、および退職後のライフスタイル・サービスを含め、多くのブランドのポートフォリオにわたる幅広い経験を有する。ベビーブーム世代や高齢者に向けての広告とマーケティングに関する問題のコメンテーターとして活躍。テレビ出演、一般紙や業界新聞への記事を執筆し、業界行事に招かれて基調講演を行っている。

『シニアマーケットの未来を予見する最良の方法』

村田 裕之(村田アソシエイツ株式会社 代表取締役社長、東北大学教授、関西大学客員授)

日本の高齢化のスピードは世界で最も速く、高齢化率(全人口に占める65歳以上の割合)はすでに22%に達し、世界一だ。米国AARPを始め世界中の企業・団体が今日本に熱い視線を送っている。それは日本の高齢社会対策が、世界のモデルケースになると見ているからだ。


注目点の第一は年金制度改革を含む社会制度の変化。高年齢者雇用安定法の改正や介護保険制度も注目されている。日本国内ではさまざま問題点が指摘されているが、ここまで整備されているのは日本だけで、これから高齢社会を迎える多くの国が注目するのは当然のことだ。


第二に商品・サービス。これも世界中が関心を示している。脳を鍛えるゲームソフトをはじめ、高齢者向けの携帯電話、直販の生活応援雑誌、中高年会員を対象にした旅行企画、介護ロボット、自動排せつ処理機能が付いた介護用トイレ、シルバー人材センター、高齢者参加型事業などが一例だ。
こうした取り組みは多くの国々から高齢社会のモデルづくりの参考例として一目置かれており、日本の新たな国際貢献になっていく。大切なことは、机上で調査・分析するだけの評論家になることでなく、自らが商品や事業を創造することだ。

村田アソシエイツ株式会社代表取締役社長。1987年東北大学大学院工学研究科修了。民間企業勤務後、仏国立ポンゼショセ工科大学院国際経営学部修了、MBA。株式会社日本総合研究所等を経て2002年3月村田アソシエイツ設立、同社代表に就任。2006年2月東北大学特任教授、4月財団法人社会開発研究センター理事長、財団法人日本総合研究所評議員、2007年4月関西大学客員教授に就任。多くの民間企業の新事業開発・経営に参画し、中高年女性専用フィットネス「カーブス」、カレッジリンク型シニア住宅「クラブ・アンクラージュ御影」など常に時代の一歩先を読んだ事業に取り組む一方、アクティブシニアビジネス分野の第一人者として日米シニアビジネスに関する講演、新聞・雑誌への執筆も多数。 複数企業の役員、顧問も務める。アメリカのシニアビジネスのフロントランナーで構成されるシンクタンクThe Society、ThirdAge.com を運営するThirdAge, Inc.、スイスのワールド デモグラフィック アソシエーションのAdvisory Boardメンバーも務める。主な著書に『リタイア・モラトリアム すぐに退職しない団塊世代は何を変えるか』日本経済新聞出版社、2007年;『シニアビジネス「多様性市場」で成功する10の鉄則』2006年、『団塊・シニアビジネス 7つの発想転換』2006年(以上ダイヤモンド社)がある。

11:00 – 12:30
スペシャルセッション1: 国際的なコンテクストから見たシルバーマーケット現象

司会:

ケネス グロスバーグ(早稲田大学教授)

早稲田大学教授。1977年にプリンストン大学で博士号取得(政治学と東アジア研究)。1974年ハーバード大学the Society of Fellowsのジュニア・フェローに選ばれた日本史の権威。後に、国際マーケティングとアジア政治経済の専門家となる。研究にくわえ、投資銀行業務と戦略コンサルティングの実務経験も持つ。ハーバードでの研究キャリアを開始後、1980年に民間企業へ移動。日本語と中国語に堪能で、Prudential-Bache Securitiesのインベストメント・バンカーとしては初めてアジア市場でのM&A業務に携わる。戦略コンサルテイング会社Orient-West Consultants, Inc.を設立。1985年にはシティバンク銀行に、アジア・パシフィック地域のConsumer Services Group / Internationalの副社長兼戦略チーフとして入社。戦略部門のチーフとして、アジア10カ国におけるシティバンクの戦略計画プロセスの運営と、日本における個人金融部門戦略の開発と管理を担当する。1980年代後半に、イェシーバー大学の招聘により新設のシムズビジネススクールのためにマーケティング課程を開設し、学界にもどる。1992年、フルブライト奨学金を受けてテルアビブ大学へおもむき、同大学でその後10年以上にわたり日本、香港、シンガポールのMBAプログラムとのハイテク関連のクライアントを中心にしたクライアントの融資によるジョイントベンチャーを立ち上げ、監督する。ハーバード大学、香港科学技術大学、 テクニオン工科大学、南洋理工大学、 コロンビア・ビジネス・スクール Fundamentals of Management Asia program、およびヘブライ大学客員教授。2001年、東京の早稲田大学よりInternational Management (MBA) programにおいて、外国人教授として初めて終身在職権を与えられる。2002年早稲田マーケティングフォーラムを設立する。

『シルバーマーケットにおけるイノベーションのチャンス』
- スライド

チャン チー ハン(シンガポール国立大学エンジニアリング・テクノロジーマネージメント学部教授、シンガポール)

シンガポールでは、従来、歳を取るにつれて必要な医療や介護が増えると考えられてきた。シルバーマーケットのための研究開発は、高齢に関連する疾病の治療や、障害のある高齢患者のための医用生体工学等に集中していた。しかし、最近では、健康な高齢者の数も増加しつつあるということが新たに認識されている。彼らは、10年から20年前の同年齢の人々よりも教養があり、裕福でもある。そのため、特に彼らのために開発された革新的な商品やサービスの受け手となりうる、新興の中流層を形成している。この増大しつつある高齢者層には、ひとつの重要な特徴がある。彼らは教養もあり、よいライフスタイルを続けていきたいと願う一方、退職基金が提供する限られた資金を長持ちさせる必要があるため、金額にみあう価値を求める。たとえば、仲間と連絡をとったり、情報を検索したり、シンプルなゲームをするなどのために、パソコンがほしいと思うが、通常のパソコンは高価すぎて、高齢者には役立たない機能が数多く盛り込まれている。

1973年、英国ウォリック大学で博士号取得(コントロール・エンジニアリング)。1974年より1977年まで、コンピューターおよびシステム・テクノロジストとしてシェル・イースタン・ペトリウム社(シンガポール)および、シェル・インターナショナル・ペトリウム社(オランダ)に勤務。1977年よりシンガポール国立大学において、工学部副学部長、電気工学科学科長などの役職を歴任。1994年から200年まで、同大学の副学長代理を務める。2001年から2003年までExecutive Deputy Chairmanとして科学技術庁Agency for Science, Technology and Researchへ出向。2004年より、シンガポール国立大学で研究を再開。現在の役職は、同大学インタラクティブ&デジタルメディア研究所マネージメント委員会議長、工学部エンジニアリングおよびテクノロジー・マネジメント部門長。2000年にシンガポールにおける科学とテクノロジーの発展に対するリーダーシップと貢献に対して国際科学技術勲章を受賞。1998年に IEEE のフェローに、2000年に英国ロイヤル・アカデミー・オブ・エンジニアリングの外国人メンバーに選ばれる。2001年よりシンガポール知的財産権庁(IPOS)の設立に関わり初代所長を務める。現在、ハイテク企業2社の会長、およびその他5社の役員を務める。

『グレーパワー:高齢の顧客としての高齢の働き手』
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スー テンペスト(ノッティンガム大学教授、英国)

本発表はますます大きくなりつつある「グレーパワー」の重要性を探る。シルバーマーケットの可能性を十分に理解するために、企業は個々の高齢者の顧客と、彼らのより広い社会的コンテキスト、すなわち、変化してゆく近親の世帯構成と世代間の関係という点への理解を深める必要がある。この発表では、高齢者とビジネス戦略についての議論を三方向に展開する。第一に、財産・健康区分マトリックスを用いて、高齢の顧客を理解する基礎を提供する。第二に、高齢の顧客は、特に、家庭環境とそれが持つより広いニーズのコンテキストの中で考えるべきことを示し、高齢の労働者と高齢の顧客を個別に考えるだけでなく、シルバーマーケットの可能性についての考察を広げる。最後に、長期的な「シルバー戦略」を計画するうえで、世代間のダイナミクスを第一に考慮することなく、台頭しつつある「グレー・ゴールドラッシュ」の流行に安易に飛びつかないよう用心すべきであることを示す。21世紀の高齢化する世帯構成についての推測に異議をとなえ、企業がグレーパワーを将来にむけて利用する助けとなるよう、さまざまな社会的コンテキストにおける顧客としての高齢労働者について解説する。

英国ノッティンガム大学ビジネス・スクール准教授(戦略マネジメント)およびノッティンガム大学ビジネス・スクール・エグゼクティブMBAプログラム副ディレクター。ノッティンガム大学で博士号(テレビ放送事業における戦略マネジメントおよび組織的学習)とMBAを取得。研究テーマは、組織的学習と経営教育、戦略および新形態組織とそれに起因するキャリア問題、戦略的経営と戦略と起業家精神への高齢化の影響など。Organization Science, Human Relations, Organization Studies, Journal of Management Studies, Long Range Planning, Management Learning and European Management Reviewなどに論文を発表している。組織的学習と戦略における新入労働者の役割に関する幅広い著作には、共著の論文“Grey Advantage: New Strategies for the Old” (Long Range Planning Vol. 35, No. 5, 2002) および“Careering Alone: Careers and social capital in the financial services and television industries“ (Human Relations Vol. 57, No. 12, 2004) などがある。

『マスメディアの終焉:エイジングと米国の新聞産業』
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マーク ミラー (50+Digital 創設者、『Retire Smart』 紙コラム執筆者、米国)

ベビーブーム世代は、米国ではマスメディアの最後のあがきを象徴している。ベビーブーム世代は、アメリカ史上最大の世代であるが、テレビ・新聞・雑誌とともに成長し、伝統的なメディアの最大の顧客層である。しかし、ベビーブーム世代に続く次の世代は、既存のメディアに関心が低く、さまざまな新しいデジタル情報源に時間を分散させることが多くなっている。顧客の減少によるダメージは、新聞業界でもっとも大きく、若い読者を引きつけるのに大変苦労している。驚くべきことに、高齢の顧客−−ベビーブーム世代やその上のシニア世代−−も紙媒体の新聞から新しいメディアへと関心の方向を変えている。このような読者の減少は、高齢の消費者はマーケティングのターゲットとしてあまり好ましくないという広告主の感覚もあいまって、米国の新聞業界の経済的基盤をおびやかしている。細分化は伝統的メディアのすべて脅威を与えているが、新聞への脅威は特に大きい。新聞の膨大な編集費用とスタッフは、歴史的に、公平な事実の集積を担う最も重要な源であり、米国において報道情報の基盤を代表するものであった。新聞が細分化と収入減少の犠牲になってゆく時、新しく活気あるニュース収集組織のうちのどんな形態のものが新聞に取って代わるのか、まだ明らかではない。

経験豊かなジャーナリストであり、50+およびベビーブーム世代の読者への情報提供のリーダーでもある。週刊コラムRetire Smartを執筆。このコラムは加齢と退職に関するトピックを中心として、米国の30以上の新聞に掲載されている。執筆した新聞コラムに加えて50+世代が関心をもつニュース記事やビデオインタビューを掲載するウェブサイトwww.RetirementRevised.comの編集兼発行人。ベビーブーム世代の関心に向けた草分け的ライフスタイル・マガジンSatisfactionと、そのウェブサイトを創刊、創設した編集長でもあり、ベビーブーム世代ビジネス、マーケティング、経済トレンドについて、新聞、雑誌、ウェブサイトに広範囲に執筆している。定評ある週刊ビジネス紙Crain’s Chicago Business前編集長、シカゴテイムズ紙日曜版編集長でもあった。また、放送業界でも幅広く活躍し、シカゴを拠点とするテレビ局とラジオ局で、ビジネス、個人の資産運用、消費者問題を取材している。ベビーブーム世代への情報提供を専門とするマルチメディア・パブリッシング・コンサルティング会社である50+Digital LLC社長。50+Digital LLCは、双方向メディアおよび印刷媒体向けの広告によってサポートされるメディアプロパティを開発して開始し運営する。また、ベビーブーム世代マーケットを重点にする他のメディア組織へのコンサルティングサービスも提供している。インタラクティブ・ストラテジーに関する広範囲の非営利団体と協力している。www.50plusdigital.com/blogで50+ビジネストレンドを中心としたブログを発表している。講演の経験も豊富で、最近ではPositive Aging Conference、the Silicon Valley Boomer Venture Summit,、What’s Next Boomer Business Summitで講演を行っている。グリンネル大学で博士号を取得(英文学)。

『教育とユーザビリティを用いたシルバーマーケットの成功‐あるドイツの経験』
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フランク ライハウゼン(メッドコム インターナショナル メディカル&ソーシャルコミュニケーション有限会社ジェネラルマネージャー、ドイツ)

月90億ユーロの購買力をもつ3000万人以上のドイツの消費者が、ドイツのマーケターのますます重要なターゲットグループになりつつある。しかし、多くの「シニア向け」広告や商品が、これらの消費者を引きつけるのに失敗している。企業はどうしたら成熟した消費者をひきつけられるのだろうか。成功の鍵となるファクターは何か。ドイツには「シニア向け商品」のマーケットが存在するのだろうか。この発表では、成功した実例に基づいて、シニア消費者のサポート・エコノミーに対するニーズと需要を解説し、高齢化するマーケットに取り組み成功をおさめるためのシンプルな方法を説明する。

保険ビジネス、マーケティング、ダイレクトマーケティングの学位を取得。10年間、金融関係企業のマーケティング実務に携わった後、2001年メッドコム インターナショナルに入社。Ineas BV (アムステルダム)、ドイツ銀行保険グループ(ボン)、Gerling insurance company (ケルン)勤務時代に、すでに高齢者関係のプロジェクトを率いた経験を持つ。MedComでは「人口動態コンサルティング」ユニットを立ち上げ、チームを率いて従業員管理のほか高齢者関係問題全般におけるコミュニケーションと商品開発を中心に扱う。2005年にジェネラルマネジャー、2006年にパートナーとなる。メッドコム インターナショナルは常に会社所属のシニア・パネルによる先行調査データに基づいてさまざまなキャンペーンやイニシアティブを創出している。シニア・パネルは高齢者が能力をつけて健康、社会保険やその他の重要な事柄における変化する問題を理解できるようにするとともに、新製品やサービスを利用できるようにすることを目指している。メッドコム インターナショナルは、高齢者の意思決定プロセスにおける情報提供と教育のため、数々のNGOや企業と力をあわせている。

13:30-14:45
基調講演セッション Ⅱ

司会:

コルネリウス ヘルシュタット(TUHH教授)

ハンブルク工科大学(TUHH)付属イノベーションマネージメント(TIM) マネージング・ディレクター兼正教授。European Institute for Technology and Innovation Management (EITIM) 設立パートナーでもある。イノベーションおよびテクノロジー・マネジメントに関する論文は130を超え、著書も多数発表。主な研究領域はイノベーションのフロントエンド、イノベーション・プロジェクトのマネジメント、リードユーザーマネジメント、オープンイノベーション、および、イノベーション・オフショアリング。ドイツ以外に、日本、インド、米国の研究プロジェクトに携わる。German Association of Professors for Business Administration会員。さまざまな編集委員会のメンバーであり、International Journal for Innovation and Technology Managementのエリアマネージャーを務める。日本学術振興会(JSPS)、ワールド デモグラフィック アソシエーション (WDA)、East West Centre (Hawaii) 、テンプルトン・カレッジ(英国オックスフォード)の旧会員/特別研究員。

『脳のスマートエイジング』
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川島 隆太(東北大学教授、加齢医学研究所所長)

大脳の背外側前頭前野に宿る実行機能は、計画、組織化、抽象化、総合的判断など、さまざまな高次認知活動の核となる最上位の機能であり、脳のさまざまな領域を協調的に動作させる指令を出す。そこで、我々は、実行機能を向上させるトレーニング方法を生活に導入すれば、実行機能がより向上した結果、さまざまな高次認知機能も向上するとの仮説を立てた。我々の産学連携研究によって、意識して脳(背外側前頭前野)を使う生活習慣を持つことで、脳を若返らせることが可能であることを示す傍証が得られている。例えば、我々が、脳科学の知識と技術に基づいて提唱した読み書き計算をシステム化した脳のトレーニングシステムによって、認知症高齢者の症状緩和や健常高齢者のQOL改善が可能であることが証明されている。今後の追跡調査によって、認知症の予防効果についても直接証拠を出すことが可能になると考えている。

東北大学加齢医学研究所教授。昭和34年生れ。千葉県千葉市出身。昭和60年東北大学医学部卒業、平成元年東北大学大学院医学研究科修了、スウェーデン王国カロリンスカ研究所客員研究員、東北大学加齢医学研究所助手、同講師、東北大学未来科学技術共同研究センター教授を経て平成18年より東北大学加齢医学研究所教授。平成20年より東北大学ディスティングイッシュトプロフェッサー。脳科学基礎研究として、小動物の脳神経細胞の代謝と循環を調べる脳ダイナミクス研究、人間の心の働きを画像化する脳機能イメージング研究、そしてそれらの研究成果を、教育や福祉領域に応用することを目指した社会技術研究まで、広範囲の研究を、医学、理学、生命科学、工学、薬学、言語学、教育学、芸術学などとの学際的共同研究を行いつつ展開している。内閣府男女共同参画会議専門調査会専門委員。前文化審議会国語分科会委員。主な受賞として、平成8年第34回日本核医学会賞、平成18年科学技術への顕著な貢献in2006(ナイスステップな研究者)文部科学省科学技術政策研究所、平成20年「情報通信月間」総務大臣表彰。査読付き学術論文130編以上、著書に『自分の脳を自分で育てる』(くもん出版);『高次機能のブレインイメージング』(医学書院):『脳を鍛える大人のドリル』(くもん出版)など、100冊以上を出版。

『日本における高齢化と金融サービスプロバイダーの挑戦』
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ウーヴェ M. ミヒェル(アリアンツ生命保険会社 カントリーマネージャー)

日本における人口動態の変化は、金融サービス企業にとっては、大きなチャレンジであると同時にまた好機でもある。日本社会の高齢化と社会保障の不安により、顧客ニーズは抜本的に変化している。
個々の顧客ニーズにあわせて、幅広い商品ソリューションを提供することが成功の鍵を握る。こうしたニーズに応える本質的なポイントは、高齢者の適切な資産活用と、若年層の資産形成にある。
日本の顧客の長期にわたる定年後のニーズに応えるために、金融サービス提供者は、継続的な年金収入、安全かつ収益の可能性がある資産管理、相続税対策、ならびに高齢者の医療介護の解決策を開発する必要がある。同時に、公的年金が削減される環境の中で、子どもの高額な教育費と定年後の準備という「二重の重荷」を将来かかえる若い世代に向けた、柔軟な人生設計が可能な解決策が必要なのである。世界で3番目の生命保険市場でもある日本に、アリアンツは2008年に参入した。1890年に創業したアリアンツ・グループは保険、銀行、資産運用サービスを世界的に提供する主要な企業の一つであり、約70カ国で8000万人を超える顧客にサービスを提供している。

アリアンツ生命保険株式会社代表取締役会長。ドイツおよびスイスで法学を学び、ドイツで法学学位を取得後、アイルランド国立大学(ダブリン)で法学修士号取得。フランスのフォンテェインヌブローにおけるINSEADにて、アドバンスト・マネジメント・プログラム修了。リンクレーターズ(ロンドン)に弁護士として勤務の後、1994年にアリアンツAG法務部に入社。 アリアンツSE (前社名アリアンツAG) のヴァイス・プレジデントとして、ミュンヘン本社と海外のさまざまなグループ会社、シンガポールのアジア地域本社のM&A業務主任およびアリアンツ・インドネシアのCEOなどを務めてアリアンツ・グループの経営に携わる。インドに拠点を置きBajaj Groupと生命保険および損害保険ビジネスのジョイントベンチャーの設立に務めた経験も有する。直近ではミュンヘンのアリアンツグループ内部コンサルタント部門長(Allianz Group OPEX)として、シックス・シグマ手法により金融サービス部門でのオペレーション品質向上のスタンダード確立に従事した。2006年より日本にて、アリアンツの生命保険市場参入の指揮を執り、2008年4月1日アリアンツ生命保険株式会社の業務開始後は、東京を拠点として同社の代表取締役会長をつとめる。

14:45 –16:15
パネルディスカッション 第1部:高齢社会におけるビジネスチャンスと企業責任

司会:

フーゴー チルキー(チューリッヒ工科大学教授、スイス)

名誉教授。博士号、DBA取得。スイス連邦工科大学ETH経営・テクノロジー・経済学部。1964年スイス連邦工科大学で修士号取得(機械工学、専攻はプロセス・エンジニアリング、自動制御、原子力工学)。1968年同大学より博士号取得(原子力工学)。1978年同大学より博士号取得(経営学)。修士論文および博士号に対して、スイス連邦工科大学賞を授与される。1968年より71年まで米国サンディエゴにて原子力発電所および高速増殖炉の安全性に関する研究を行う。1971年より76年までカール・ツァイス、チューリヒ社CEO(光学およびエレクトロニクス)。1976年より82年までCerberus社CEO(主要な保険会社。従業員数3000名)。1982年より2006年までスイス連邦工科大学チューリヒ校正教授(経営学、主に戦略的経営、テクノロジーおよびイノベーション・マネジメント、イノベーションおよび知識集約的起業の経営)。1992年、東京工業大学にてサバティカル。2000年、MITスローン・スクール・オブ・ビジネスにてサバティカル。キャノンスイス社、 Dräger、
LogObject、B‘Resultなどで取締役員会メンバーを務める。著書にTechnology & Innovation Management on the Move (2003); Structured Creativity (2006); Sustained Innovation Management (2007) がある。

パネリストメッセージ:「ユニバーサルデザイン:超高齢社会のものづくり」

渡辺 政嘉(経済産業省製造産業局 ものづくり政策審議室室長)

日本では世界に例を見ない急激な速度で高齢化が進んでいる。日本の社会を構成する生活者に占める高齢者の比率は確実に高まっている。高齢者は加齢に伴い身体機能の低下が始まり日常生活の様々な場面で不便をかかえている。一方で、生活者を取り巻く製品や環境はこれら急激な変化に対応しているであろうか。このような高齢社会におけるものづくりは、高齢者の比率の高まった生活者に応える製品や環境を提供することが求められている。現在までに、障害者や高齢者にとっての障害を取り除くためにバリアフリー化の取り組みが進められてきた。バリアフリー化は、既に存在しているバリアを取り除く取り組みである。これら取り組みは過渡期的な措置として合理性は認められるものの、社会的コスト面から見ると合理的とは言い難い。後から補正するのではなく、最初からなるべく幅の広い多様な生活者のニーズへ配慮したものづくりを指向するユニバーサルデザイン(以下UD)の考え方が提案されている。超高齢者社会における共生社会を実現するためには、UDニバーサルデザインの考え方を取り入れたものづくりを広げることが必要であろう。

経済産業省製造産業局ものづくり政策審議室長(東京工業大学特任教授、岩手大学、東京電機大学客員教授)。1963年東京生まれ 博士(工学)(東北大学博士課程後期修了)。1990年通商産業省入省、東北経済産業局総務課長、2005年~2007年は産業技術環境局研究開発課企画官として経済産業省全体の研究開発戦略である「技術戦略マップ」の統括責任者として活躍。2007年からは、製造産業局ものづくり政策審議室長として日本のものづくり政策の企画・立案を担当し現職に至る。主な専門分野に研究開発マネージメント、技術ロードマップ、人間工学、ユニバーサルデザイ等。主な著書に『技術ロードマップの設計・導入・実施と研究開発戦略への活用』(共著)技術情報協会、2008年;「テクノロジー・ロードマッピングを方法論として活用した異分野技術融合促進のための ディスカッションマニュアル(Ver.1.0)C-Plan(Convergence Plan)」(共著)経済産業省産業構造審議会研究開発小委員会資料等がある。

パネリストメッセージ:「シルバーマーケットによって創造されるビジネスチャンスの3つのカテゴリー」

児玉 文雄(芝浦工業大学教授)

シルバーマーケットが作り出すビジネスチャンスには、三つのカテゴリーがある。一つは、高齢者自身のマーケットであり、これは「ユニバーサルデザイン」のコンセプトによる研究がすすんでいる。他の二つは、事実上、高齢者が間接的に作り出すマーケットだ。そのひとつは、高齢者を介護する人たちの需要によるマーケットである。高齢者介護の実態と、どのようなテクノロジーが介護に役立つかを知る必要がある。第三のカテゴリーは、高齢者が自宅で孫たちをもてなすことによって発生するマーケットである。その一例が、孫たちを楽しませるための薄型液晶テレビの急速な普及である。

芝浦工業大学・技術経営研究センター長。1964年東京大学工学部機械工学科卒業、東京大学工学博士(1974年)。埼玉大学大学院政策科学研究科教授、科学技術政策研究所総括主任研究官を経て、1991年ハーバード大学客員教授(ケネディスクール:「科学技術と公共政策プログラム」)、1992年スタンフォード大学客員教授(工学部:「科学技術と社会」プログラム)、1994年東京大学 先端科学技術研究センター教授、2001年先端経済工学研究センター センター長、2003年東京大学名誉教授、2003年芝浦工業大学専門職大学院・工学マネジメント研究科教授・研究科長。2007年より現職。吉野作造賞(「ハイテク技術のパラダイム」1991年)、科学技術長官賞(「技術革新過程に関する研究」1991年)を受賞する。Editor (Research Policy);日本工学アカデミー会員;日本MOT学会長;日本研究技術計画学会長。

パネリストメッセージ:「米国の団塊の世代は自身の高齢化する未来をどう予測するのか:シルバーマーケットが意味するもの」

メリル シルバースタイン(南カリフォルニア大学教授、米国)

南カリフォルニア大学教授(老年学、社会学)。コロンビア大学で博士号取得(社会学)、その後、南カリフォルニア大学にてポストドクター研究生(国立老化研究所NIA研究生) を経て、ブラウン大学助教授(人口学)。1993年よりUSC Davis School of Gerontologyに所属、1999年に助教授となる。2002年からは教授としてUSC社会学部にも所属。研究テーマは家庭生活のコンテクストの中での加齢で、世代間の移行と推移、ライフ・コースへの社会的支援、祖父母と孫の関係、中高年の移住、介護家族への公共政策、老いの不安、高齢化家族への国際的パースペクティブなどを含む。発表論文は100を超え、 Intergenerational Relations Across Time and Place (Springer Publishing) および From Generation to Generation: Continuity and Discontinuity in Aging Families (Johns Hopkins University Press)の二冊を編纂。現在、Longitudinal Study of Generations(長期的世代研究)の主要な研究者である。これは、40年以上にわたって多世代家族を追跡し、伝記的、社会的、世代的時間を通じて家族関係がどのように変化したかを研究するプロジェクトである。また、中国、スウェーデン、およびイスラエルでも世代間関係についてのプロジェクトを展開中。研究はNIA, NICHD, NSF, Fogarty International Center, Binational Foundationおよび米国退職者協会AARPからの助成金を受けている。Gerontological Society of America, the Brookdale National Fellowship Program, および、フルブライト交流計画研究員プログラムのフェローである。

パネリストメッセージ:「社会、国家は各自で企業責任とビジネスチャンスのバランスを試行錯誤を続けて見つけなければならない」

マーティン ポール(在日ドイツ大使館参事官)

シルバーマーケットの全体像は、主に政府に責任がある。「シルバー」のうちのごく少数だけが、完全に経済的に自立している。大多数は政府から支給されるか、政府に管理される年金にたよっている。シルバーマーケット自体が、多くの部分で、政府によってコントロールされるか、管理されているのだ。それは商品の安全性だけにかかわることではない。政府はしばしば、シルバーマーケットの商品やサービスを直接提供するか、提供者を管理する。他の商品は、政府の価格統制によって制限されている。日本政府は、公的保険によって資金がまかなわれるべき製品の原価能率に、特に焦点をあてている。すなわち、健康保険と長期の介護保険である。それにより質が制限される。その一方で、政府の直接的な関心の外で提供される高齢者むけ製品やサービスは、ほかの多くの国よりも幅広いバラエティをもって提供されている。しかし、シルバーマーケットの大手企業は政府と関連がある。結果として、特に海外の企業が難しい決定を迫られる場合がある。高品質な車椅子のメーカーは、他の国々での価格に匹敵する値段で、製品を自由市場で販売するべきだろうか? 車椅子の販売数が少なくなり、裕福な人だけが、よりよい生活の質を得られることになるだろう。この企業は日本政府に要求された低価格で製品を販売して、(たとえばドイツでのように)大幅に少ない利幅を受け入れべきだろうか? 一方、日本政府が健康保険や長期の介護保険に対して低価格を保障するのは、正しいことだろうか? 誰がプレミアムを払うのだろうか。政治経済学も経営管理学も、最終的な答えを導き出すことはできない。それぞれの社会、それぞれの企業が、相互依存的に、何度も繰り返し責任とビジネスチャンスのバランスを取っていかなければならないのである。

2006年よりドイツ外務省、在日ドイツ大使館勤務。労働・保健・社会保障課担当参事官。マンハイム大学で経営学の学位を取得。前職は、1996年より99年までドイツ鉄道コンサルティング社、ドイツ鉄道株式会社およびドイツ銀行株式会社のコンサルタント。1999年から2005年までGerman National Trade Union for Building, Agriculture and the Environmentで業務管理担当。2003年より2006年までLafarge-Roofing GmbH(従業員12100名)の監督委員会メンバー。著書にSponsorship of Literature by Private Enterprise in Germany and England, Mannheim 1996, www.uni-mannheim.de/mateo/verlag/diss/mpohl/mpohl.html. Management Consulting, in Prof. Dr. Kost, Klaus (Ed.): Wir retten, was zu retten ist, Marburg 2004, S. 103-119がある。

パネリストメッセージ:「顧客を知ることこそ最重要ポイント」

メリヤ カルッピネン(仙台フィンランド健康福祉センター研究開発館館長)

世界の高齢化社会におけるビジネスチャンスについて知るには、末端顧客の日常生活を理解する必要がある。特に、文化の違いがからんでいる場合は、統計その他の二次的データに基づく市場調査に頼るのは不十分だ。むしろ、潜在的な消費者が本当に必要とするものを見いだすためには、実践的なアプローチが必要である。
リビング・ラブの設置により、消費者の要望やニーズをモニターするのが容易になる。仙台フィンランド健康福祉センターはリビング・ラブ施設の一例で、日本の老人介護の利用者と提供者のニーズに関する情報を常に提供している。日本でこのような高齢者介護施設を運営することによって、福祉とヘルスケアにおける日本市場の貴重な情報が得られる。新しいテクノロジーをこのユニットでテストすることが可能である。利用者もスタッフも、高齢者介護に関する価値の、文化による差異についての重要な研究材料を提供している。それは高齢化社会の将来のニーズと変化への洞察を与えている。将来のユーザーを知り、そのニーズを予測できることは、競争において有利となる。



仙台フィンランド健康福祉センター研究開発館館長(2007年6月より)。このフィンランドと日本の間のユニークな協力事業における、フィンランド政府およびフィンプロの代表者。ヘルシンキ商科大学 (HSE)において国際ビジネス学の理学博士号を取得。国際ビジネスにおける知識創造の文化的パターンの研究を専門とする。前職はフィンランドのヴァーサ大学教授(国際ビジネス学)。HSEに長期間在職し、フィンランド、ラトヴィア、日本、オーストラリアの大学で客員講師を務める。現在はHSEの客員研究員を兼任。1982年に初来日、交換留学生としてICUと北海道大学で学んで以来、日本社会と関わる。その後、日本企業に勤め、日本の大学で教えた経験を持つ。日本における社会変化に関するディスカッションに活発に参加している。関連する最新の著作に、「フィンランド人の見た東北の未来:フィンランドと東北地域の働く女性」『東北21』 2008年6月がある。

パネリストメッセージ:「シルバーマーケットで稼ぐ:セグメント特化の価格設定がカギ」

ステファン リッペルト(サイモン‐クッチャー&パートナーズ、ストラテジー・マーケティングコンサルタンツ、マネージングパートナー)

一見したところ、シルバーマーケットは、日本の高齢者のニーズに対応できるビジネスにおいては、大きな利益をもたらすチャンスを与えているように見える。海外企業も国内企業も、この数年間、新しいビジネスチャンスを追求している。シルバー世代のニーズを完全に理解することが、このマーケットで成功する鍵である。しかし、これは価値というコインの片面でしかない。ニーズは需要と同じではないし、需要は利益のあがるビジネスと同じではない。利益を出すには、バリュー・デリバリーとバリュー・エクストラクションのバランスをとらなくてはならない。バリュー・デリバリーは比較的簡単である。それには、市場調査と、適切な商品とサービス、そして、効果的な販売システムが必要だ。バリュー・エクストラクションは難しい。商品、地域、ルートにまたがる適正な価格を設定し実施する必要がある。人口動態および社会経済学的データ、顧客ニーズおよび購買力のみに基づくビジネス戦略は、単純化しすぎであり、間違った方向に行きやすく、時には危険である。シルバーマーケットを利用するには、高齢者に合わせた商品とサービスを開発し収益を上げられるように販売するためのシステム・アプローチが必要である。顧客の要求、顧客への価値、支払能力と意思、価格の弾力性、収入と利潤関数をしっかり理解しなくてはならない。これを達成するもっともよい方法は、価格戦略と価格設定および価格インプルメンテーションをカバーし結びつける専門的なプライシング・プロセスによるものである。

サイモン・クチャ&パートナーズ・ジャパンのマネージングパートナー。サイモン・クチャは収入による利益増加に焦点をあてる、共同経営による戦略とマーケティングのコンサルティング会社である。現在、世界に展開する17のオフィスで450名のコンサルタントを擁している。サイモン・クチャ入社以前は、マッキンゼー・アンド・カンパニー社に勤務。ドイツおよびオーストリアで、経済学、史学、哲学、法学を学ぶ。1995年にキール大学で博士号取得後、早稲田大学商学研究科、米国ハーバード大学法科大学院で研究に携わる。主要な研究機関で国際戦略とマーケティングに関する講演やセミナーを数多く行っている。

16:45-18:15
スペシャルセッション2: 技術革新、商品開発とテクノロジー

司会:

クリスティアーネ ヒップ(ブランデンブルク工科大学経済・経営部教授、 ドイツ)

2005年よりブランデンブルク工科大学正教授(組織、人材管理、全般管理)、2007年に副学部長に就任。1994年にインダストリアル・エンジニアリングの学位を取得、1999年に博士号取得(経済学)。1995年より1999年まで、フラウンホーファー研究所研究員、1999年より2005年までハンブルク・ハールブルク工科大学にてイノベーション・マネジメントの研究を続けるかたわら、ボーダフォンなど数社の上席技術マネージャーを務める。2006年ハンブルグ・ハールブルク工科大学より大学教員資格を取得。マンチェスター大学客員研究員としてイノベーションと競争の研究に携わる。研究分野はサービス・イノベーション、イノベーション戦略、知的所有権、イノベーション・プロセス。“Service peculiarities and the specific role of technology in service innovation management” (International Journal of Services and Technology Management Vol. 9, No. 2, 2008) および“Innovation in the Service Sector: The demand of service-specific innovation measurement concepts” (Research Policy Vol. 34, No. 4, 2005) をはじめ、これらのジャンルで論文を発表している。

『機能的なだけでは満足しない:シルバーマーケット顧客のニーズの変化』
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ディーナ マクドナー (イリノイ大学芸術・デザインスクール、アーバナ‐シャンペーン、教授、米国)

私たちを取り囲んでいる製品の数々は、私たちの日常生活に大きなインパクトを与えることがある。良質なデザインはめだたないが、質の悪いデザインは文字どおり私たちから尊厳を奪い去る。急速に高齢化が進行する社会において、シルバーマーケットの製品のユーザーは、機能面での満足以上のものを期待している。彼らは、超機能性(supra-functionality)をも期待する。それには、社会的、文化的、憧憬的、同族的、感情的なニーズが含まれ、従来の科学的な研究方法を適用することでは理解できない場合がある。この発表の焦点は、私たちの物質的風景(製品があふれている環境)の重要性、製品の消費とボンディングにおけるシルバーマーケットのトレンド、そして、より適切で満足のいくデザインを確実に生み出すために、デザイナーがユーザー・エクスペリエンスをデザインのプロセスに組み込む革新的な方法である。

School of Art + Designおよび米イリノイ大学(アーバナ・シャンペーン校)Beckman Institute of Advanced Science and Technology准教授(インダストリアル・デザイン)。米国での大学教授職以前は、英国ラフバラ大学デザイン・テクノロジー学の准教授(インダストリアル・デザイン、ユーザー中心デザイン)を務めた。ワールド デモグラフィック アソシエーションおよびデザイン リサーチ ソサエティー研究員。共感型デザイン研究アプローチによって、製品がどのように個人の豊かな生活を可能にするかを中心に研究している。最近では、高齢者や身体障害者など周辺的な立場の人たちの声が反映されるよう、非デザイナーをデザインプロセスに組み込む
ことに焦点をあてている。

『高齢社会における商品開発への消費者参加 ― 方法、利益とチャレンジ』
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ウーヴェ クライネマス(ボン大学エイジング文化センターディレクター、ドイツ)

消費者参加は、全般的に、商品やサービスを扱う企業に好まれるトピックではない。特に、高齢の消費者は商品開発やプロダクト・デザインのプロセスからしばしば除外されている。この発表では、高齢の消費者を明確に組み込んだ消費者参加という現代の概念を論じ、高齢化社会における商品のライカビリティ(好感度)とユーザビリティの重要性を強調する。コンセプトのとなるのは、50歳以上の年齢の2500人からなる代表団である。メンバーは高齢者が日常的によく必要とするさまざまな商品をテストする。テストの後、その製品とサービスに関する感想と意見についての情報を収集するために、規格化されたアンケートと面接調査を行う。結果は消費者の側からの品質保証と、人口動態に適応した製品およびサービスの改良との両方に有益なものとなる。さらに、高齢の消費者を継続的に組み込んでいくことは、商品やサービスの販売促進にもつながり、高齢化社会にいきる人々に求められる、より多くの、そしてより良質の製品のためのマーケットを開くことにもなるだろう。

2002年設立のボン大学エイジング文化センター(ZAK)のディレクター。専門は心理学で、1994年に博士号取得。加えて、診断、評価、研究方法論の分野においてボン大学心理学部の上級講師をつとめる。ZAKディレクターとして、もっとも広い意味での「成功する加齢」の条件に関する学際的研究をコーディネートする。現在の研究プロジェクトのテーマは、高齢ドライバーのリスクプロファイルから寿命の伸びの倫理的意味まで幅広い。さらに、応用科学における最近の問いに答えるため、老年学の知識の、経済や社会への浸透にも取り組んでいる。人口動態変化と、経済的ターゲットグループとしての高齢者への影響が、主として関心のあるテーマのひとつである。

『シニアサービス技術革新をオープン - ある調査企画書』
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フランク ピラー(アーヘン工科大学テクノロジー・イノベーションマネージメントグループ教授、ドイツ)

新製品開発(NPD)の主な課題は、新しいデザインを消費者の好みに合わせることである。シルバーマーケットの到来と、この現象から起こる新たな需要は、需要の不均質性の拡大、爆発的に増大する製品の複雑性、そしてクリエイティブな消費者の出現という既存の課題に、さらなる課題を加えている。この発表では、このような困難な状況下でのNPDをより効率的にするための新たな方策をさぐる。イノベーションのための重要な外部ソースのひとつは商品またはサービスのユーザーである。多くの発明は製造業者によってではなく、ユーザーによって考案される。これは、より多様なアイディアや知識をNPDに組み入れることによって、パフォーマンスが向上し、その結果として製品が市場の要求によりフィットする、という考え方である。発表では、特に、新たな商品を決めるプロセスに高齢者を取り入れることによって、オープン・イノベーション方式から利益をあげるために企業が利用できる、シルバーマーケット向けの商品およびサービス開発のための多様な戦略の組み合わせについて論じる。

RWTHアーヘン工科大学Technology & Innovation Management Group 教授(経営学)。米国マサチューセッツ工科大学MIT Smart Customization Groupの副所長を兼任。2007年よりアーヘン大学で現職。それ以前はMITスローン・スクール・オブ・マネジメント (Innovation and Entrepreneurship Group) に在籍し、TUMビジネス スクール、 ミュンヘン工科大学(1999-2004)准教授を務めた。研究テーマは企業と消費者/ユーザー間の価値の共同創出、イノベーションマネジメントとオペレーションマネジメントとマーケティングの間のインターフェース。ニューヨークタイムズ紙、エコノミスト紙、ビジネスウィーク誌に多数引用される。マス・カスタマイゼーション、パーソナライゼーション、オープン・イノベーションの第一人者である。ブログmass-customization.blogs.comはマス・カスタマイゼーションと顧客が推進する価値創出に関する第一級の情報源である。1997年のHarvard Business Reviewドイツ版に掲載の論文とマス・カスタマイゼーションに関する最初の著作(1998年)が、ヨーロッパにおけるマネジメント・アジェンダにこのトピックをもたらした。最近の研究でファッション産業における革新的クラウドソーシング・ビジネスモデルである“Threadless”分析(小川進と共著)はMIT Sloan Management Reviewで論文のトップ20のうちの一つに選ばれた。1999年ヴュルツブルク大学(ドイツ)にて首席で博士号を取得(オペレーション・マネジメント)。TUMビジネス・スクールより大学教員資格取得。German Scholar-ship Foundation研究員、ヨーロピアン マネージメント アカデミー(EMA)創設メンバー。研究活動は、企業、ドイツ連邦教育省(BMBF)、ECおよびその他の機関から資金助成を受けている。マネジメントコンサルティング会社Think Consultの設立パートナーとして、クライアントが真に顧客中心の戦略を利用することで顧客によりよいサービスを提供できるよう援助している。

『高齢者ケアに革新的技術を効果的に利用する際に障害となるもの』
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ヘリナ メルカス(ラッペンランタ工科大学ラハティ校教授、フィンランド)

この発表は、老人介護におけるテクノロジーの導入と利用において典型的な落とし穴となる諸問題に焦点をあてる。アラーム装置のテクノロジーを含めたジェロンテクノロジー(加齢工学)の利用が増加している。老人介護における介護職員への影響は、ケアワークに技術革新を根付かせる可能性において重要な意味を持つ。ヒューマン・インパクト・アセスメント方法論を利用して、テクノロジー利用に関連する能力、テクノロジー利用のオリエンテーションへのニーズ、介護職員の福利を評価できる。警報装置は実際のケアワークと、介護施設の管理部門との両面で役立つ。介護職員はたいていの場合、技術的な問題や警報装置の設置による組織面での変化に関して、それほど熟知してはいない。個人のレベルと、職場のレベルにおいて、新しいテクノロジーの定期的なヒューマン・インパクト・アセスメントが、専門の介護者によるアラーム装置の採用を促進する可能性がある。評価は高齢者とその親族の観点からも実施すべきである。この発表は、フィンランドでのいくつかの大きな研究と開発プロジェクトにおける体験的調査に基づくものである。調査はセイフティ・テレフォンとハイテク福祉リストバンドを中心に行った。

フィンランド、ラッペーンランタ工科大学Lahti Unit特任教授(インダストリアル・マネジメント、特にインフォメーション・クオリティ)兼上席研究員。ヘルシンキ工科大学インダストリアル・エンジニアリング・アンド・マネジメント学部で理学博士号(科学技術)を取得。その前に、ヘルシンキ大学とオーボ・アカデミー大学より社会学の学位を取得。日本の他に、国際労働事務所 (ジュネーブ)、国連大学世界開発経済研究所WIDER (ヘルシンキ)、フィンランド労働省に勤務。研究テーマは特にジェロンテクノロジー(加齢工学)、テクノロジー・フォーサイトおよびアセスメント、高齢者介護サービス、イノベーションプロセス、インフォメーション・クオリティ、ソーシャルネットワーク、および雇用問題。マサチューセッツ工科大学など世界数ヶ所で専門家としての職を持つ。International Journal of Information Quality編集局員。主な論文には、“Towards holistic management of information within service networks: Safety telephone services for ageing people” (2004)および“Analyzing information quality in virtual networks of the services sector with qualitative interview data” (in Al-Hakim, Latif, ed., Challenges of Managing Information Quality in Service Organizations, 2007) などがある。

18:15 – 18:30
まとめと総評

渡辺 千仭(東京工業大学教授)、コルネリウス ヘルシュタット(TUHH教授) フローリアン コールバッハ(DIJ研究員)

3日目          2008年10月4日 (土)

09:15-09:45
開会:書籍のご紹介

コルネリウス ヘルシュタット(TUHH教授)、フローリアン コールバッハ(DIJ研究員)

特別プレゼンテーション:
「米国の団塊世代は自身の高齢化する未来をどう予測するのか:シルバーマーケットが意味するもの」
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メリル シルバースタイン(南カリフォルニア大学教授、米国)

この発表では、米国のベビーブーム世代が持つ高齢化への不安の3タイプを取り上げ、それらのシルバーマーケットへの影響を論じる。ベビーブーム世代の473人の全国サンプルによるデータを利用して、高齢化への不安の構造と予測変数を考察する。この世代が持つ、年を取ることへの不安を、三つの側面が適切に表現していることがわかる。まず、自立性の喪失への不安が最も強力な要因として現れ、次に、加齢が身体的に現れることへの不安と、高齢になっても安心して暮らし続けられるかどうかに関する悲観論/楽観論がそれに続く。ジェンダー、婚姻関係の有無、収入、加齢についての知識、高齢者に接する機会の有無など、さまざまな要因がこれらの側面に関連している。われわれは、ベビーブーム世代の持つ加齢への不安の源を理解することが、マーケターと広告主が、高齢化を目前に控える消費者のマーケットをよりよく理解する助けとなることを論じ、ベビーブーム世代の不安に対し、加齢のポジティブなイメージを伝える方法を提案する。

ドイツの大学における将来的な学生数減少を補うためのシニア向け教育プログラム」
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クリスティアーネ ヒップ (ブランデンブルク工科大学教授、ドイツ)

多くの先進国は現在、人口減少と高齢化に直面している。ドイツの人口は約8240万人から、2050年には6900万から7400万の間にまで減少すると予測されている。同時に、平均年齢は上昇している。特に、東ドイツにおける次の数年間は若年層の大きな減少と、高齢者の大きな増加が特徴となるだろう。しかし、人口動態の変化は、自動的に、ネガティブな結果を意味するわけではない。それはチャンスも産みだしている。このチャプターでは、ひとつの重要な経済的コンポーネントを、教育におけるシルバーマーケットに含めるチャンスをさぐる。これは二つの展開により可能となった考察である。まず第一に、現在と今後の高齢者世代が、知的文化的テーマの学習に余暇を使うようになってきていること、第二に、伝統的な大学で学生数が減少していることである。われわれは、65歳以上の人々を教育問題に取り込み、「退職後世代」と高等教育機関の双方にとって有利な状況を作り出すための誘因について考察する。

09:45-11:00
基調講演セッション Ⅲ

司会:

渡辺 千仭(東京工業大学教授)

『変化するシルバーマーケットのためのマーケティング戦略』
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ジョージ モーシス(ジョージア州立大学教授、マチュアコンシューマー研究センター所長、米国)

この発表は変貌するシルバーマーケットと、明日の高齢消費者のニーズに対してよりよい対応をするために、マーケターがどのように準備すればよいかを中心にしている。変化しつつある地球環境のコンテクストの中で高齢者の消費パターンに影響を与える高齢化のプロセスと、拡大するシルバーマーケットに対して効果的なマーケティング戦略を開発するために、マーケターがそのような変化を利用する方法を考察する。発表のトピックには、世代間の相違、市場区分とポジショニング戦略、拡大するシルバーマーケットの移り変わる市場区分をターゲットとするマーケット戦術が含まれる。

ジョージア州立大学教授(マーケティング論)。Alfred Bernhardt Research Professorおよび、Center for Mature Consumer Studies長を兼任。センター設立者であり、過去20年にわたり老年学部に所属する。このジャンルでは初のコースであるMarketing to Older Adultsをはじめ、教育用資料開発のパイオニアである。世界各国でさまざまな世代の消費者を研究し、過去30年のアメリカの各世代に関する調査結果を含めたBaby Boomers and Their Parentsをはじめ、6冊の著書を発表している。消費者行動とマーケティングの分野での貢献は、学界でもビジネス界でも高く評価されており、世代別マーケティング関連の問題について、世界のさまざまな組織に協力している。

『日本におけるシルバーマーケット分野の規制改革』
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八代 尚宏(国際基督教大学教授)

人口高齢化が急速に進展するなかで、日本の高齢化市場も成長しつつある。その内でも医療サービスは、顧客が確実に増えることと、規制によって新規参入が抑制されており、供給面の効率性を高める余地が大きいと言う点で、もっとも将来性の高い産業分野である。様々な参入規制が撤廃されれば、生産性を高める余地は大きい。そうした規制の内で、もっとも重要なものは公的保険と民間保険の併用禁止と病院の資本調達手段への規制である。
高齢者介護サービスや働く女性の増加による保育サービスへの需要も、将来の拡大が見込める分野である。いずれも従来は家族内での活動であったが、市場サービスへの代替が進んでいるにもかかわらず、様々な規制が質の高い産業の発展を阻んでいる。こうした分野における規制改革が、日本のシルバーマーケット発展のカギとなっている。

国際基督教大学教養学部教授。1946年生。1981年メリーランド大学にて経済学博士号取得。1992~2001年上智大学国際関係研究所教授 。2000~2005年日本経済研究センター理事長。2005年より現職。2006年より経済財政諮問会議議員を兼務。主要著作 に『規制改革-法と経済学からの提言』有斐閣、2003年;『健全な市場社会への戦略』東洋経済新報社、2007年がある。

11:00 – 12:30
スペシャルセッション3: シルバーマーケットのためのマーケティング、商品と サービス

司会:

スー テンペスト(ノッティンガム大学教授、英国)

英国ノッティンガム大学ビジネス・スクール准教授(戦略マネジメント)およびノッティンガム大学ビジネス・スクール・エグゼクティブMBAプログラム副ディレクター。ノッティンガム大学で博士号(テレビ放送事業における戦略マネジメントおよび組織的学習)とMBAを取得。研究テーマは、組織的学習と経営教育、戦略および新形態組織とそれに起因するキャリア問題、戦略的経営と戦略と起業家精神への高齢化の影響など。Organization Science, Human Relations, Organization Studies, Journal of Management Studies, Long Range Planning, Management Learning and European Management Reviewなどに論文を発表している。組織的学習と戦略における新入労働者の役割に関する幅広い著作には、共著の論文“Grey Advantage: New Strategies for the Old” (Long Range Planning Vol. 35, No. 5, 2002) および“Careering Alone: Careers and social capital in the financial services and television industries“ (Human Relations Vol. 57, No. 12, 2004) などがある。

『シルバーマーケットのゴールデンチャンス』
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ケネス グロスバーグ(早稲田大学早稲田マーケティングフォーラムディレクター、日本)

日本における先例のない高齢化は、ひとつの社会として、また経済大国としての将来に、コストとチャンスを提供している。日本の高齢者はすでにこの国の富の最大の部分をコントロールしているが、近い将来、彼らが歳を取って総人口に占める割合が大きくなるにつれ、介護と生活への社会的支出の大半を消費することにもなるだろう。このチャプターでは、大量の流動資産に結びついている大きな社会的人口動態変化により、重要なビジネスチャンスが見込める二つの領域を考察する。その領域とは、第一に、高齢者の金融ニーズを満たすこと、第二に、住宅に対する彼らの独特の嗜好と要求に応えることである。日本における全般的に停滞した住宅市場と金融サービス市場では、シルバーマーケットは最も豊かな市場区分を提供するが、この世代にそのようなサービスを提供して成功をおさめるには、スキルと、感受性と、進化する日本の消費者の思考様式への理解が必要である。

早稲田大学教授。1977年にプリンストン大学で博士号取得(政治学と東アジア研究)。1974年ハーバード大学the Society of Fellowsのジュニア・フェローに選ばれた日本史の権威。後に、国際マーケティングとアジア政治経済の専門家となる。研究にくわえ、投資銀行業務と戦略コンサルティングの実務経験も持つ。ハーバードでの研究キャリアを開始後、1980年に民間企業へ移動。日本語と中国語に堪能で、Prudential-Bache Securitiesのインベストメント・バンカーとしては初めてアジア市場でのM&A業務に携わる。戦略コンサルテイング会社Orient-West Consultants, Inc.を設立。1985年にはシティバンク銀行に、アジア・パシフィック地域のConsumer Services Group / Internationalの副社長兼戦略チーフとして入社。戦略部門のチーフとして、アジア10カ国におけるシティバンクの戦略計画プロセスの運営と、日本における個人金融部門戦略の開発と管理を担当する。1980年代後半に、イェシーバー大学の招聘により新設のシムズビジネススクールのためにマーケティング課程を開設し、学界にもどる。1992年、フルブライト奨学金を受けてテルアビブ大学へおもむき、同大学でその後10年以上にわたり日本、香港、シンガポールのMBAプログラムとのハイテク関連のクライアントを中心にしたクライアントの融資によるジョイントベンチャーを立ち上げ、監督する。ハーバード大学、香港科学技術大学、 テクニオン工科大学、南洋理工大学、 コロンビア・ビジネス・スクール Fundamentals of Management Asia program、およびヘブライ大学客員教授。2001年、東京の早稲田大学よりInternational Management (MBA) programにおいて、外国人教授として初めて終身在職権を与えられる。2002年早稲田マーケティングフォーラムを設立する。

『高齢者向けマーケットとWeb 2.0を使ってコミュニケーション』
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ディック ストラウド(20plus30 コンサルティング設立者およびマネージングディレクター、英国)

このセッションでは、ソーシャルネットワークとウェブビデオという、ウェブ2.0テクノロジーによって可能になった二つのアプリケーションが、企業と高齢の消費者と間のコミュニケーションを改善するためにますます重要になってきている状況を論じる。これらのアプリケーションの機能性と、加えて、マーケティング・コミュニティによる、これらのアプリケーションの利用法を解説する。
二つのテクノロジーはどちらも若年者の市場に向けて開発されたものであるが、急速に進化してエイジ・ニュートラル(年齢中立的)なものになっている。次に、高齢の消費者への重要性というコンテキストで、ウェブ2.0アプリケーションが発展していくと思われる方向を論じる。最後に、企業がマーケティングの可能性を十分に利用するために企業がとるべき行動を提案する。


コンサルタント、講師、著述家。企業の50代以上の世代へのマーケティングにおけるあらゆる面での向上を支援するマーケティングコンサルティング会社20plus30の創立者でマネージング・ディレクター。20plus30設立以前は、デジタル・マーケティング産業界で勤務。Internet Strategies (Palgrave) の著者で、戦略コンサルティング会社Internet Strategiesの創立者でCEO。IBMおよびPA Management Consultantsに勤務した経験も持つ。現在はChartered Institute of Marketingのトレーニングコース・ディレクターおよびロンドン・ビジネス・スクール客員講師。近著The 50-Plus Market (Kogan Page)では、急速に推移する人口動態により、企業が販売とマーケティングのあらゆる側面を再評価し、エイジ・セントリックからエイジ・ニュートラルへと進化する必要に迫られている理由を解明している。ヨーロッパのマーケティング学会でのたびたび講演し、Marketing Forum, CriticalEye, Marketing Week and Marketingに寄稿している。

『ヤング アット ハート:サラリーマンの心をつかむエレキギターを甘く見てはいけない!』
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デーヴィッド マッコーガン(株式会社マッキャンワールドグループ、アジア‐パシフィック戦略プランニング、エグゼクティブ バイスプレジデント、日本)

日本の人口は世界で最も高齢化しているかもしれない。しかし、日本を主にヘルスケアや保険やロボットによる介護サービスの市場だと決めつけるのは間違っている。団塊世代の定年は2007年から始まったが、彼らの新しい生活への対応の仕方には絶えず予想を裏切られている。この論文では、5年にわたる継続的な調査に基づいて、今日の定年世代が「新しい生活の構築」にどのように取り組んでいるかを考察する。更に、新しい生活に対する彼らの態度、夢、想い、願望等を具体的な事例を含めて見ていくと共に、マーケターにとってこれがどのような意味を持つかも論じる。この10年でもっとも重要な健康商品として注目されているWiiから、旅行市場の変化、最近シニアの間で再燃しているエレキギター人気等を取り上げていく。

シドニー生まれ。図書館科学及び政治学の学士号に加え、大学院にてマーケティングの学位を取得。1986年にマッキャンエリクソン・シドニーに入社。1996年にプランニング及びリサーチ機能を設置。1995年後半に、アジア地域の「消費者インサイト・ディレクター」に就任し、バンコクに拠点を移し18カ国の20を超えるオフィスのインサイトとプランニングを担当する。1998年から99年に、マッキャン・タイのマネージング・ディレクターを務めたのち、2000年に香港へ異動しアジアのリージョナル・プランニング・ディレクターに就任。1996年からMcCann PULSE™を開始し、毎週アジアの主要20都市の消費者と対話し、大衆文化が生活者の意思決定に与える影響を継続的に調査してきた。このプログラムは現在も80カ国以上で実施されている。2003年マッキャンエリクソン(日本)の執行役員、戦略プランニング・ディレクターに就任。2007年からは、アジアパシフィックのリージョナル・戦略プランニング・ディレクターを兼任。マッキャン入社以前は、ヨーグルトメーカー、児童図書館員、紳士服販売員、執事を務めるなど多彩な経歴をもつ。400以上のカンファレンスでマーケティングの諸側面について講演、マーケティング関連記事やコラムも執筆している。

『高齢の消費者が好むカスタマーサービス』
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シモーヌ ペティグリュー(西オーストラリア大学教授、オーストラリア)

オーストラリアにおける数多くのサービス産業を横断して得られたデータは、高齢者への顧客サービスの重要性を強調した先行研究の成果を裏付けている。特に、高齢者はサービス提供者とのリレーションシップをつくれるような温かい本物のインタラクションを高く評価する。こうしたリレーションシップは、機能面でのニーズが満たされるという安心感を与えるだけでなく、生活の中で、人との満足できるコンタクトを得る手段ともなる。リレーションシップの重視は、高齢者の肉体的心理的な弱さを反映しており、そのため、さまざまな商品や社会的成果のためのサービス提供者への依存が大きくなる。高齢者向けの顧客サービスその他の優先事項は、明確で重要な情報を複数の形式で提供すること、待ち時間の短縮、製品のロケーションについての支援が含まれる。マーケターにとって第一に重要なことは、スタッフの補充と、高齢者のための満足できる機能的心理的成果を出せる優秀な従業員を送りだせるようなトレーニング過程を確保する必要性である。高齢のスタッフを新規におよび継続的に雇用することは、この目的を達成するための重要な手段となるだろう。

西オーストラリア大学(UWA)ビジネス・スクール講師(マーケティング論)。研究職につく前は、オーストラリアのエネルギー部門でのマーケティングの仕事に携わった。ウエスタン・オーストラリア大学で博士号取得。Marketing Theory, International Journal of Advertising, International Journal of Consumer Studies, Journal of Consumer Marketing, Australasian Journal on Ageing, Qualitative Market Research, British Food Journal, Food Quality and Preference, Journal of Food Products Marketingなど多くの専門誌で研究を発表。オーストラリア国内および国際的基金組織から数多くの助成金を受けている。現在、プロジェクトは弱い立場の消費者、特に高齢者と児童を中心とするプロジェクトで助成金を受けている。特に関心のある領域は、小児肥満、高齢による精神疾患、青少年期のアルコールによる害など。Journal of Research for Consumers (www.jrconsumers.com)の創刊者で編集長。2001年からJRCは消費者の教育や能力開発、利益をめざす研究を発表している。研究者、消費者、公共政策関係者をターゲットとするウェブベースの刊行物として、JRCは新しい消費者行動知識を多様なターゲットグループに提供している。Consumption, Markets and Culture誌の編集委員も務め、Transformative Consumer Research (TCR) 諮問委員会の設立メンバーでもある。TCRはコンシューマー・リサーチへのひとつのアプローチであり、消費者にとって重要な問題を調査するために研究者の知識と専門知識の利用を奨励している。TCR委員会はAssociation for Consumer Researchによって集められ、マーケティング論におけるコンシューマーフォーカスの展開を推進している。消費者重視の専門家として、オーストラリア、ヨーロッパ、米国でのセミナーや学会に招かれ、このトピックについての講演を行っている。

『ビジネスチャンスの拡大に向けて:シルバーマーケットにおける製品のユーザビリティと安全性』
- スライド

杉田吉広 (テュフ ラインランド ジャパン(株)シニアマネジャー)

最近多発している事故に注目してみると、製造業者はシルバーマーケットを対象とした製品安全の重要性を本当に理解していないように思えます。今回は最近の事故を例として取り上げ、シルバーマーケットを対象とした製品設計の必要性が拡大していること、また他のマーケット対象の既存のデザインを取り入れるだけではすでに対応できなくなっていることについてお話いたします。まずユーザビリティと安全性という、二大柱についてお話をし、その後それぞれの既存の規格について解説をしていきます。それらの規格の問題点に触れた後、現在開発中の機能安全とロボットの規格をご紹介します。
今回のプレゼンテーションでは製造業者の方々に、ユーザビリティーと安全性が設計段階で配慮されるべき重要な点であり、シルバーマーケットのニーズが安全かつ持続的に満たされて始めてビジネスチャンスが到来することを知って頂ければと思います。テュフ ラインランドのような試験機関を有効に利用し規格を開発させることが、目標達成への近道であることを知っていただければ幸いです。

テュフ ラインランド ジャパン株式会社、ビジネスデベロップメント部、シニアマ
ネジャー。安全基準についての国内規格・国際規格作成に携わり、日本での安全サービスの発展に貢献。大阪電気通信大学工学部卒業。テュフ ラインランド ジャパン株式会社には1995年に入社。以来、産業機械の検査官として、あらゆる種類の危険性についての審査を行い、規格の発展にも寄与した。ISO/TC199 (機械安全)、IEC/TC44(機械類の安全性ー電気的側面)の日本国内委員を務める他、 次世代ロボットの安全ガイドラインの検討グループにも参加している。SEMI JAPANではEHS委員会の委員であると共に、国際規制適合委員会の共同議長を務めている。ACGIH (米国産業衛生専門家会議)会員。国際規格ハンドブック/No.2-5(日本規格協会発行)を共同執筆。

13:30 -14:45
基調講演セッション Ⅳ

司会:

フローリアン・コールバッハ


ドイツ日本研究所

ドイツ-日本研究所研究員。ウィーン商科大学で修士号および博士号取得(経済学、経営学)。現職では人口動態変化のビジネスへの影響についての研究プロジェクトを担当。ハンブルク工科大学イノベーションメ ネージメント研究科特任研究員、ワールド デモグラフィック アソシエーション研究員、インターナショナル マチュア マーケティング ネットワーク名誉会員でもあり、東京のさまざまな大学で非常勤講師を務める。著書には、International Marketing in the Network Economy: A Knowledge-based Approach (Palgrave Macmillan, 2007) 、コルネリウス・ヘルシュタットと共編でThe Silver Market Phenomenon: Business Opportunities in an Era of Demographic Change (Springer, September 2008) がある。

『高齢社会のためのサイバニクスを基盤とするソリューション』

山海 嘉之(筑波大学グローバルCOEサイバニクス教授)

この発表では新しい研究分野であるサイバニクスを紹介する。サイバニクスとは、サイバネティクス、メカトロニクス、情報科学を中核として、人間とロボット(RT)を機能的、有機的、社会的に情報技術(IT)と融合複合する最前線科学の新しい研究領域である。この分野における先駆的な成果が、ロボットスーツHAL (Hybrid Assistive Limb)という、発表者が開発した、身体機能を拡張し増幅することができるサイボーグ型ロボットである。HALは、神経信号を発する脳からの微弱な生体電位信号を皮膚表面から感知することにより、その信号を元にパワーユニットを制御して、人間の手足の動きを支援する。HALは介護支援や障害者への日常生活動作支援、工場での重作業支援、身体訓練支援、災害現場でのレスキュー活動支援およびエンターテイメントなどさまざまな分野への応用が期待されている。この発表では、HALのようなサイバニクスを基盤技術とするソリューションが、高齢社会と、その結果として起こるさまざまなことに対処しなければならない人々の生活において、どのように重要や役割を果たすかを示す。

筑波大学大学院システム情報工学研究科教授。1958年岡山県に生まれる。1987年筑波大学大学院(博)修了、工学博士(筑波大学)を取得。日本学術振興会特別研究員、筑波大学機能工学系助手、講師、助教授、米国Baylor医科大学客員教授、筑波大学機能工学系教授を経て現職。日本栓子検出と治療学会委員、日本ロボット学会理事、日本ロボット学会評議員、CYBERDYNE(株)創設者、筑波大学産学連携ILC山海プロジェクトリーダー、欧文誌Advanced Robotics委員長、医学雑誌Vascular Lab. Executive Editorなどを歴任・担当。筑波大学「次世代ロボティクス・サイバニクス」学域代表。グローバルCOEサイバニクス国際拠点リーダーを務める。Cybernetics, Mechatronics, Informatics を中心として、脳・神経科学、行動科学、ロボット工学、IT技術、システム統合技術、生理学、心理学などを融合複合した人間・機械・情報系の新学術領域「サイバニクス」を開拓し、人間の機能を強化・拡張・補助する研究を推進。主な研究業績として、人間の身体機能を増幅・拡張する装着型のロボットスーツHAL(Hybrid Assistive Limb)を世界で初めて開発し、2004年6月には”HAL“の開発/製造を行う大学発ベンチャー「CYBERDYNE(サイバーダイン)」を設立。ネットワーク医療、次世代医療福祉システムの研究開発も精力的に推進している。2005年The 2005 World Technology Awards大賞受賞。2006年、首相官邸での総合科学技術本会議にて、ロボットスーツを提示し、当該医療福祉分野の重点的推進が閣議決定。2006年グッドデザイン賞金賞受賞、2006年11月日本イノベーター大賞優秀賞受賞。2007年経済産業大臣賞受賞(産学官連携功労者)。2007年つくばベンチャー大賞大賞受賞。2008年1月文部科学省ナイスステップな研究者2007(地域・産学連携イノベーション部門)受賞。

『心理的効果の増強とロボットセラピーのための対話型ロボット』

柴田 崇徳(産業技術総合研究所主任研究員)

アザラシ型ロボットは、家庭でのペットの代替と、病院や高齢者向け施設などでのアニマルセラピーの代替を目的に研究開発された。様々な実験により、元気付け、うつの改善などの心理的効果、ストレスの低減や脳機能の改善などの生理的効果、コミュニケーションの活性化などの社会的効果を示した。日本では、2005年から商品化され、1000対以上が利用されている。また、研究用などで世界20カ国以上でも利用され始めている。

独立法人産業技術総合研究所知能システム研究部門主任研究員。(株)知能システム取締役。東京大学生産技術研究所協力研究員。1989年名古屋大学工学部電子機械工学卒、1992年同大学院博士課程電子機械工学専攻終了。博士(工学)。1993年通商産業省工業技術院機械技術研究所研究官、1998年主任研究官。1995-97年マサチューセッツ工科大学人工知能研究所研究員兼任、1998年客員研究員。1996年チューリッヒ大学人工知能研究所客員研究員。2001-08年科学技術振興機構戦略的創造研究の研究員を兼任。1997年より東京大学生産技術研究所協力研究員、2001年より独立法人産業技術総合研究所知能システム研究部門主任研究員、2005年より(株)知能システム取締役を兼任し、現在に至る。研究内容は人と共存する知能システムを専門とし、人とロボットのコミュニケーション、メンタルコミットロボット、ロボット・セラピー、人道的対人地雷探知・除去システムの研究開発などに従事している。「パロ」が2002年もっともセラピー効果があるロボットとしてギネスブックに載る。
2002年(財)日本産業デザイン振興会・新領域部門、グッドデザイン賞、2003年(社)日本青年会議所、人間力大賞、人間力大賞グランプリ、TOYP倶楽部会長特別賞、内閣総理大臣奨励賞、2004年IEEE TExCRA 2004、Best Technical Exhibition Award、2006年経済産業省、今年のロボット大賞・優秀賞(サービス部門)など多数受賞。論文・著書も多数出版している。

14:45-16:15
スペシャルセッション4:産業界の挑戦と解決策

司会:

チャン チー ハン(シンガポール国立大学教授、シンガポール)

1973年、英国ウォリック大学で博士号取得(コントロール・エンジニアリング)。1974年より1977年まで、コンピューターおよびシステム・テクノロジストとしてシェル・イースタン・ペトリウム社(シンガポール)および、シェル・インターナショナル・ペトリウム社(オランダ)に勤務。1977年よりシンガポール国立大学において、工学部副学部長、電気工学科学科長などの役職を歴任。1994年から200年まで、同大学の副学長代理を務める。2001年から2003年までExecutive Deputy Chairmanとして科学技術庁Agency for Science, Technology and Researchへ出向。2004年より、シンガポール国立大学で研究を再開。現在の役職は、同大学インタラクティブ&デジタルメディア研究所マネージメント委員会議長、工学部エンジニアリングおよびテクノロジー・マネジメント部門長。2000年にシンガポールにおける科学とテクノロジーの発展に対するリーダーシップと貢献に対して国際科学技術勲章を受賞。1998年に IEEE のフェローに、2000年に英国ロイヤル・アカデミー・オブ・エンジニアリングの外国人メンバーに選ばれる。2001年よりシンガポール知的財産権庁(IPOS)の設立に関わり初代所長を務める。現在、ハイテク企業2社の会長、およびその他5社の役員を務める。

『ユビキタス技術による安心・安全社会の創造 ‐ 高齢社会へのパナソニックのキーテクノロジ-』
- スライド

川上 哲也(パナソニック(株)システムソリューションズ社 先行技術センター)

日本は急速に高齢社会に向かっており、パナソニックの商品開発ターゲットも高齢社会に向けて調整される。本発表では、

  1. ユニバーサルデザイン
  2. ユビキタスネットワーク
  3. 新しいビジネスエリアについて述べ、

さらにユビキタス技術に関して詳細に述べる。


パナソニック株式会社システムソリューションズ社 先行技術センター。工学修士。ユビキタスセンサーネットワークを専門分野とする。

『シルバーマーケットと顧客 ‐ いくつかの例をもとに』
- スライド

ペーター メルテンス(シーメンス(株)コーポレートテクノロジー部部長)

人口動態の変化は、企業に課題とチャンスの両方を与えることになる。65歳以上の高齢者の割合はすべての先進国で増加する。同時に、若年者、すなわちあらゆる教育レベルでの新入生は減少する。したがって、高齢者の雇用率は上昇することが見込まれる。


企業は多くの異なったレベルで対応することが可能である。一方では、クライアントが高齢者を治療したり支援したりするのに役立つ製品やサービスを開発・販売して、この状況をビジネスチャンスにすることができる。医療テクノロジーの分野からいくつかの事例を紹介する。他方で、企業は若い労働者の減少に対処しなければならない。退職によって技術が失われるのを防ぎ、高齢の労働者の便宜をはかり、なおかつ/あるいは、以前より少ない人員で操業しなければならなくなる。こうした問題が、企業がこの問題を解決するのに役立つ製品やサービスにつながっていくこともありうる。そのような製品の例をいくつか示す。われわれは、こうした製品の多くが、高齢の労働者に限らず、すべての労働者を支援する利点を備えていることに注目する。それゆえ、人口動態の変化期において興味深い技術的な製品の多くは「シルバー向け」製品ではなく、ユーザビリティと問題解決を重視して「すべての人のためにデザインされた」製品となるだろう。

日本におけるシーメンス社の産業テクノロジー部門を率いる。フィリップス大学(マールブルク)より博士号(物理学)取得後、国際的な電気電子工学企業シーメンス社に入社、産業テクノロジー、発電システムおよび送配電システム部門に勤務。
ライトレール・ビークルのエンジニアリング・プロセス、製造生産性改良およびリストラクチャリング、製品管理および研究開発、企業の研究開発戦略を担当するチームと部門を率いた。プラント設計の要求側面における十分に発達したタービュランスの統計理論HW-SW強調設計手法、フルテクスト・データーベース及びパタン認識技術、多角的企業におけるイノベーション戦略の諸側面、人口動態変化のテクノロジー企業への影響について研究および著書を発表。最近の論文には、Kuebler, A. Mertens, P. Russell, S., and Tevis, R. (2008), “Enterprises Face the Aging Demographic – Some options to overcome demographic challenges in a multinational company“ (Interna-tional Journal of Human Resource Management and Development [IJHRMD], “Aging Workforce and HRM” 特集号) およびMertens, P., Russell, S. and Steinke, I. (2008), “Silver Markets and business customers: Opportunities for industrial markets?” (in Kohlbacher, F. and Herstatt, C., eds., The Silver Market Phenomenon: Business Opportunities in an Era of Demographic Change., Springer: Berlin, Heidelberg, New York, 2008) などがある。

『シニア市場の進展:製造業のイノベーション戦略』
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森 洋之進(アーサー・D・リトル(ジャパン)(株)ディレクター)

50代以上のシニア層の人口構成比が2010年には43%、即ち人口の半数近くなると予測されている。この「市場の老齢化」現象を前にして、製造業各社はその重点対象市場をBRICSを始めとした海外新興市場にシフトしたり、また、これまで以上に欧米先進国への輸出依存傾向を強くしたたりしている。これは、事業規模の維持拡大を基本戦略とした場合、メーカーが取るべき選択肢の一つであることに間違いはないが、その一方で、国内において市場のマジョリティーにならんとするシルバー市場に対する「イノベーション戦略」が不足しているのではないかとも考えられる。


一方で、国内の一部の企業では、その企業独自のイノベーション創造基盤(我々はこれを統合的にイノベーションプラットフォームと呼んでいる)を活用して、他に先んじてシルバー市場において地歩を固めつつある。例えば、ヤマハは50年間に500万人を輩出したヤマハ音楽教室を、「50歳からの音楽レッスン」と再定義しなおして、シルバー世代向け、とりわけ旧ビートルズ世代をターゲットとして音楽教室と高額楽器販売に力をいれている。
また、カルピスは、シルバー世代において最大の課題となりつつある生活習慣病に対して、独自の乳酸菌技術を応用した『アミールS』という機能性健康飲料を他社に先駆けて1997年に市場投入し、その後の「シルバー向け」飲料市場の発展を方向付けた。


これらの事例のように、主に消費材系製造業各社は、巨大化する国内シルバー市場に向けたイノベーション戦略を遂行することによって事業成長の活路を見出そうとしているが、大半の企業はまだその方向性が定まっていないようである。

アーサー・D・リトル(ジャパン)株式会社ディレクター。コンサルティング領域は情報電子・機械・消費財・流通業界を中心とした全社経営革新支援、個別事業戦略策定、技術・知的財産戦略策定、組織改革支援等。東北大学工学部機械工学修士課程修了。米国カリフォルニア大学バークレー校経営学修士(MBA)。経済産業省「産業構造審議会知的財産政策部会経営・情報開示小委員会」委員、同省「特許権流動化・証券化研究会」委員などを務める。著作に『〈戦略的〉知的財産マネジメント実践ガイド』企業研究会、2005年、『目覚めるキヨスク』(共著)中央経済出版社、2004年など多数。

『シニア市場におけるマーケティング戦略』
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西川 和樹((株)電通シニアプロジェクト部長)

日本は、2055年には人口の2.5人に1人が65歳以上の高齢者になるだろうと言われており、世界に先駆けて急激な高齢社会へと突き進んでいます。少子化が進む一方で、ベビービーマーである団塊世代のリタイアが始まります。健康で、時間も資産も有している「アクティブ・シニア」と呼ばれる高齢者が増えていくことで、シニア市場が質・量共に変化していくことは間違いありません。電通シニアプロジェクトは「まだまだ未開のシニア市場を開発し、産官学と共に、シニアが幸せに暮らせる社会を創造していくこと」をミッションとして、啓発活動や、とりわけアクティブ・シニアに向けたビジネス開発に取り組んでいます。今回はそうした我々のプロフィールと共に、これまでクライアント企業がシニア市場に取り組んできたその変遷、および様々な企業事例から見えてくるシニアマーケティングについて、広告会社の立場からご紹介してまいります。


株式会社 電通シニアビジネス推進部長(2008年7月1日より)。1955年3月3日 東京都生まれ。1980年 早稲田大学 政治経済学部 政治学科卒業。1980年電通に入社。クリエーティブ局コピーライターとして9年間、約60社のクライアントを担当。1988年より、営業局(Accont Exective Devision)に15年間勤務。約30社のクライアントを担当。2003年より、プロジェクト・プロデュース局 ソーシャルプロジェクト部に勤務。官公庁やNHK、企業とのコラボレーションで、国民運動レベルのソーシャルビジネスプロジェクトに着手。2005年プロジェクト・プロデュース局シニアプロジェクト部長。インサイト分析を元に啓発活動を行うとともに、営業時代やソーシャルビジネス業務の知見を活かし、メディアタイアップやシニア層の膨大な会員組織を持つ企業とのコラボレーションを仕掛けるなど、「アクティブシニアマーケット」を育成すべく様々なビジネス開発を推進中。2006年9月より、シニアコミュニケーション、オプト、電通の3社共同出資による「株式会社シニアダイレクト」の社外取締役を務める。著書に『団塊マーケティング』電通シニアプロジェクト編著(電通刊)などがある。

16:45-18:15
パネルディスカッション 第2部:人口動態変化と技術革新:評価と将来の展望

司会:

コルネリウス ヘルシュタット(TUHH教授)

ハンブルク工科大学(TUHH)付属イノベーションマネージメント(TIM) マネージング・ディレクター兼正教授。European Institute for Technology and Innovation Management (EITIM) 設立パートナーでもある。イノベーションおよびテクノロジー・マネジメントに関する論文は130を超え、著書も多数発表。主な研究領域はイノベーションのフロントエンド、イノベーション・プロジェクトのマネジメント、リードユーザーマネジメント、オープンイノベーション、および、イノベーション・オフショアリング。ドイツ以外に、日本、インド、米国の研究プロジェクトに携わる。German Association of Professors for Business Administration会員。さまざまな編集委員会のメンバーであり、International Journal for Innovation and Technology Managementのエリアマネージャーを務める。日本学術振興会(JSPS)、ワールド デモグラフィック アソシエーション (WDA)、East West Centre (Hawaii) 、テンプルトン・カレッジ(英国オックスフォード)の旧会員/特別研究員。

パネリストメッセージ:「シルバーマーケット ‐ 手つかずの根本的な経済問題」

フーゴー チルキー(チューリッヒ工科大学教授、スイス)

人口動態統計によって可能な予測は、自然の法則による結果に近いものである。高齢化社会への傾向は、その典型的な一例である。しかし、この明白な展開から厳しく現実的な結論を出すことは、これまで、応用経済学の世界においてだけでなく学問の世界でもおそろかにされてきた。ひとつの原因は、おそらく、現実生活が持つ非常に多分野にまたがる性質をないがしろにして、主として単独の学問分野に焦点をあてるという、大学で一般的な研究方法に内在する欠点であろう。


それゆえ、このシンポジウムの価値と課題は二つある。シルバーマーケット現象への学際的で多様な貢献により、大きな関心を持たれている社会問題に対する、よくありがちな個別の見解を超える。同時に、進行中の高齢化の傾向に対応して、現在と将来の公共の習慣や商習慣に応用されうるようなアプローチを明らかにする有望な可能性を秘めている。

名誉教授。博士号、DBA取得。スイス連邦工科大学ETH経営・テクノロジー・経済学部。1964年スイス連邦工科大学で修士号取得(機械工学、専攻はプロセス・エンジニアリング、自動制御、原子力工学)。1968年同大学より博士号取得(原子力工学)。1978年同大学より博士号取得(経営学)。修士論文および博士号に対して、スイス連邦工科大学賞を授与される。1968年より71年まで米国サンディエゴにて原子力発電所および高速増殖炉の安全性に関する研究を行う。1971年より76年までカール・ツァイス、チューリヒ社CEO(光学およびエレクトロニクス)。1976年より82年までCerberus社CEO(主要な保険会社。従業員数3000名)。1982年より2006年までスイス連邦工科大学チューリヒ校正教授(経営学、主に戦略的経営、テクノロジーおよびイノベーション・マネジメント、イノベーションおよび知識集約的起業の経営)。1992年、東京工業大学にてサバティカル。2000年、MITスローン・スクール・オブ・ビジネスにてサバティカル。キャノンスイス社、 Dräger、
LogObject、B‘Resultなどで取締役員会メンバーを務める。著書にTechnology & Innovation Management on the Move (2003); Structured Creativity (2006); Sustained Innovation Management (2007) がある。

パネリストメッセージ:「シルバーマーケットにおける破壊的技術革新のチャンス」

チャン チー ハン(シンガポール国立大学教授)

シルバーマーケットは、若者と裕福な層に向けた製品やサービスとは全く異なった、新しい製品とサービスのための多くのチャンスを提供することが期待されている。ディスラプティブ技術(破壊的技術)は現在の主流なマーケット(若い消費者)には魅力的ではないが、周辺の新興マーケット(シルバーマーケット)においては評価されているテクノロジーである。上質なテクノロジー/性能をそなえているが、同時に高齢者が買いやすく使いやすい新製品をうみだすディスラプティブ技術は、発展しつつあるシルバーマーケットにおいて、ますます重要な役割を果たすことになるだろう。たとえば、高齢者向けのパソコンには、ビジネス生産性のためのたくさんのソフトウェアは、もはや不可欠ではない。そのような消費者は手ごろな価格のシンプルなソフトを探すからである。パソコンのハードウェアは上質だが手の届く価格でなければならないが、市場からのフィードバックのひとつは、高齢者は自分が年寄であることを認めたくない場合もあるので、他の多目的パソコンと全く違った外見でないほうがよいということだ。そのため、ひとつの見解としては、ハードウェア自体は、特別にデザインされた外見の異なるマシンよりもむしろ、たとえば低コストだが品質のよいEee-PCのような汎用のものでよい。しかし、そのようなコンピュータを高齢者が使いやすくするために、キーのサイズや画面上の文字サイズなどのいくつかの修正は必ず提供されるべきである。

1973年、英国ウォリック大学で博士号取得(コントロール・エンジニアリング)。1974年より1977年まで、コンピューターおよびシステム・テクノロジストとしてシェル・イースタン・ペトリウム社(シンガポール)および、シェル・インターナショナル・ペトリウム社(オランダ)に勤務。1977年よりシンガポール国立大学において、工学部副学部長、電気工学科学科長などの役職を歴任。1994年から200年まで、同大学の副学長代理を務める。2001年から2003年までExecutive Deputy Chairmanとして科学技術庁Agency for Science, Technology and Researchへ出向。2004年より、シンガポール国立大学で研究を再開。現在の役職は、同大学インタラクティブ&デジタルメディア研究所マネージメント委員会議長、工学部エンジニアリングおよびテクノロジー・マネジメント部門長。2000年にシンガポールにおける科学とテクノロジーの発展に対するリーダーシップと貢献に対して国際科学技術勲章を受賞。1998年に IEEE のフェローに、2000年に英国ロイヤル・アカデミー・オブ・エンジニアリングの外国人メンバーに選ばれる。2001年よりシンガポール知的財産権庁(IPOS)の設立に関わり初代所長を務める。現在、ハイテク企業2社の会長、およびその他5社の役員を務める。

パネリストメッセージ:「高齢化する会社と社会における“高齢化する労働力問題”のための知識戦略」

ヨーゼフ ホーファー‐アルファイス(アモンティスコンサルティング(株)パートナー、ドイツ)

人口動態問題は、商品やサービスを適応させなければならないということだけを意味するのではない。もうひとつ、ますます重要となる課題がある。それは、どのようにして「高齢化する労働人口」と、望ましい高レベルのイノベーションおよびパフォーマンスのバランスをとり、維持し続けるかという問題である。それは人事管理だけの問題だろうか。そうではない。今日のビジネスとサービスにおいては、知識が成功の鍵となる主要なファクターであり、重要な知識は個人にのみ存在するのではない。組織の知識はさまざまな知識領域に区分できる。その領域の知識も、3タイプの知識キャリアー(保持者)によって流通し、従って3つの形態の知識がある。個々の能力を持った個人、補完的能力という形での分散ネットワーク型の知識を持つグループまたは組織団体(集合的知識がそれぞれの能力の間の接着剤の役目をはたしている)、そして、程度の差はあれ体系化された、すなわち定義され構造化された知識。


労働人口の高齢化による根本的な問題は、この包括的知識のパースペクティブから再考されるべきであり、効果的なナレッジマネージメント(知識経営、KM)プログラムにつながる知識戦略を規定しなければならない。2つの事例について、より詳細に論じる。(1)ベビーブーム世代の「エキスパートの退職」の波に関係なく、適切なパフォーマンスレベルを維持すること。(2)潜在的に減少傾向にあるイノベーション能力を、増加するオプティマイゼーション、すなわち高齢化する労働人口に内在するパフォーマンス能力、に対してバランスをとること。

電気工学技術者。1990年より知識経営およびイノベーション・マネジメントのコンサルタント、研究者、講師として活躍。2007年2月よりアモンティス コンサルティング株式会社(ハイデルベルク)の知識経営、イノベーション・マネジメント、知的資本マネジメント担当の経営コンサルタントで共同経営者であり、関連するコンピテンス・センターを運営する。大企業のみならず、さまざまな中小企業にコンサルティングを行う。1997年にドイツの企業間知識経営専門家ネットワークの議長となる。このネットワークには、現在では70社から110名以上が参加している(www.wimip.de)。ドイツとオーストリアの4大学で知識経営についての教鞭をとる。1984年から2007年にかけて、シーメンス社のコーポレート・テクノロジーなどさまざまなユニットで、ビジネス・プロセス、知識経営、アイディア/イノベーション・マネジメントの調査研究とコンサルティングを行う。10年にわたってシーメンス社のノレッジマネージメント議長をつとめる中核メンバーでもある。2004年から2007年には、知的資本管理のマネージャーとして複数の組織間チームを率いて、企業全体のプロセススタンダードに従って、知識、アイディア、イノベーションおよび知的所有権管理の融合を推進した。その前は、企業知識経営ユニットのメンバーであり、知的資本を重要なプロジェクトに合わせて調整するための、事業主と経営陣による知識戦略の決定、実施、コントロールを支援した。

パネリストメッセージ:「高齢化による労働力の人的構成変化」

クリスティアーネ ヒップ (ブランデンブルク工科大学教授、ドイツ)

人口動態変化により、ドイツや日本などの国における労働人口構成はこれから数年の間に大きく変化する。同時に、企業はイノベーションのためにクリエイティブで熟練した人材を必要とする。労働者の高齢化、技術不足、そして、ベビーブーム世代の退職の波による知識の喪失が、国全体の革新性と変化率を阻害する可能性がある。三つの主要な仮定を提示して論じる。
・経験的データによると、労働力の高齢化と企業の革新性の縮小の間には、直接的な関連は全くない。


・しかしながら、高齢の労働者(50+)の比率が高い企業は、高齢者の比率が平均的な企業に比べ、専門能力開発への投資が少ない。これは生涯学習への要求と矛盾している。


・高齢労働者を差別せずに、イノベーション能力を見いだし、支援し、開発することに関して、人財管理をサポートする必要性が増大するだろう。知識経営と資格プログラムが、これらの国において企業が継続的に成功をおさめるために大きな重要性を持つようになりつつある。

2005年よりブランデンブルク工科大学正教授(組織、人材管理、全般管理)、2007年に副学部長に就任。1994年にインダストリアル・エンジニアリングの学位を取得、1999年に博士号取得(経済学)。1995年より1999年まで、フラウンホーファー研究所研究員、1999年より2005年までハンブルク・ハールブルク工科大学にてイノベーション・マネジメントの研究を続けるかたわら、ボーダフォンなど数社の上席技術マネージャーを務める。2006年ハンブルグ・ハールブルク工科大学より大学教員資格を取得。マンチェスター大学客員研究員としてイノベーションと競争の研究に携わる。研究分野はサービス・イノベーション、イノベーション戦略、知的所有権、イノベーション・プロセス。“Service peculiarities and the specific role of technology in service innovation management” (International Journal of Services and Technology Management Vol. 9, No. 2, 2008) および“Innovation in the Service Sector: The demand of service-specific innovation measurement concepts” (Research Policy Vol. 34, No. 4, 2005) をはじめ、これらのジャンルで論文を発表している。

パネリストメッセージ:「slimジャパン:活力減少社会へ向けて」

和田 雄志((財)未来工学研究所 ディレクター)

21世紀の人口減少時代における日本の新たなサバイバル戦略を“slimジャパン”プロジェクトとして位置づけ、具体的な処方箋を探りたい。slimとは、文字通り、日本社会全体が「スリム」になることをめざすとともに、S、L、I、Mの4つのイニシャルから構成されている。すなわち環境やエネルギー面でSustainableであること、日々Livableな生活が送れる社会であること、技術や制度・システム面では常にInnovativeであること、そして文化・社会としてMaturedであること、を実現する社会をめざす。人口構造データをベースとして、中長期的視点から、経済・産業、社会、医療福祉、教育・文化、政治、国土政策、環境・エネルギー、科学技術、国際関係などの諸分野における影響予測と関連する政策提案を行うが、今回は、特に人口減少社会をささえる新しい技術のありかたについて具体的に言及したい。

財団法人未来工学研究所21世紀社会システム研究センター長。日本未来学会常任理事。立教大学文学部心理学科卒業(1974)。主な研究テーマは人口減少社会の未来シナリオ、科学と文化の融合領域研究、21世紀の医療・ヘルスケア、リスクコミュニケーション研究、身体の未来研究、地域開発プロジェクト他。主な編著書に『地域からの情報発信-地域情報化テイクオフの条件』ぎょうせい、1989年「日本文化と科学が出会う」がある。

パネリストメッセージ:「シルバーマーケットはより深い意味をもつ、絞り込まれた商品によって牽引されていくだろう」

ディーナ マクドナー (イリノイ大学芸術・デザインスクール、アーバナ‐シャンペーン教授、米国)

シルバーマーケットの消費者は、機能的ニーズと超機能的(suprafunctional)ニーズの両方を満たしてくれる製品に囲まれていることを望む。これらのニーズには、社会的、感情的、精神的、憧憬的なものが含まれている。このグループの消費者は、前の世代よりも要求が高く、個々のライフスタイルを反映する優れたユーザビリティを備えた製品を期待している。もし製品および/あるいはテクノロジーが個々のユーザーと共鳴しない場合は、心理的なバリアができて、ユーザーがその製品との「関係」を築くのを妨げ、製品の放棄という結果になることがある。製品がユーザーに重要なサポートを提供する可能性があっても(たとえば、腰の手術後に使う杖)、その製品が機能をこえたニーズを満たしていて欠点がないとユーザーが感じない限り、その製品は使われずじまいになるだろう。適切な製品とテクノロジーの場合には、シルバーマーケットは、幅広い人々に役立つ新製品開発に大きな影響を与えるだろう。さらに効果的なデザインが生まれるような、ホリスティックなデザインプロセスを推進することによって、シルバーマーケットの消費者は、機能性と超機能性の融合を促進する助けになるだろう。

School of Art + Designおよび米イリノイ大学(アーバナ・シャンペーン校)Beckman Institute of Advanced Science and Technology准教授(インダストリアル・デザイン)。米国での大学教授職以前は、英国ラフバラ大学デザイン・テクノロジー学の准教授(インダストリアル・デザイン、ユーザー中心デザイン)を務めた。ワールド デモグラフィック アソシエーションおよびデザイン リサーチ ソサエティー研究員。共感型デザイン研究アプローチによって、製品がどのように個人の豊かな生活を可能にするかを中心に研究している。最近では、高齢者や身体障害者など周辺的な立場の人たちの声が反映されるよう、非デザイナーをデザインプロセスに組み込む
ことに焦点をあてている。

18:15-18:30
まとめと総評

渡辺 千仭(東京工業大学教授)、フローリアン コールバッハ(DIJ研究員) コルネリウス ヘルシュタット(TUHH教授)

2日目          2008年10月3日 (金)

TBA 調整中
特別基調講演

『アクティブ エイジング ‐ 健康産業において何を意味するのか?』

イローナ キックブッシュ教授(ワールド デモグラフィック アソシエーション主催のワールド エイジング&ジェネレーション会議議長)

現在のベビーブーム世代は健康産業にとってますます重要なターゲットグループになっている。短期間のうちに、重要な新しいマーケットが発達し、さまざまな市場区分の試みが行われている。非常に興味深いのは、この業界の領域の幅広さであり、健康指向の無形財産を提供する商品やサービスから、自立した生活を可能にするハイテク製品まで広範囲にわたる。商品の幅広さは、高齢者の多様性のみならず、高齢化へのさまざまな社会的アプローチの反映でもあり、アンチエージング医薬品から、積極的な社会参加を支援するサービスまで幅広い。このような多様性は、高齢化と高齢者に対する、産業と社会のパースペクティブを変化させ、高齢者は、イノベーターやいち早い適応者と見なされるようになりつつある。

ワールド デモグラフィック アソシエーション主催のサンクト・ガレン ワールド エイジング ジェネレーション会議議長。世界保健機構、エール大学、フルブライト交流計画研究リーダーなどの経歴をもつ。現在はSwiss Federal Office for Public Healthのシニア保健政策アドバイザー、Graduate Institute of International and Development Studies(ジュネーブ)にてDirector of the Global Health Programmeを務める。オーストラリア、ディーキン大学(メルボルン)およびHertie School of Governance(ベルリン)の特任教授。国際赤十字赤新月社連盟、ヨーロッパ財団センターなどの組織にアドバイスを与え、EC委員会の公衆衛生・保健プログラムのほか、さまざまな国の保健機構および国際的保健機構に深く関わっている。国レベルや世界レベルで健康を増進するための政策や戦略について、講演やアドバイスを求められている。出版も幅広く(最近では健康社会関連)、Nordic School of Public Healthからの名誉博士号をはじめ、多くの賞や栄誉を受けている。学界と保健政策の領域とで幅広く顧問をつとめ、CAREUM(スイス)委員会のメンバーでもある。最近では、南オーストラリア州首相の招聘により、Adelaide Thinker in Residenceを務めた。コンスタンツ大学(ドイツ)にて博士号(政治学)を取得。近著には、Policy Innovation for Health (ed., Springer 2008) and Health and Modernity, Theoretical Foundations of Health Promotion (ed. with David McQueen et al., Springer 2007) などがある。

1日目          2008年10月2日 (木)

17:00-18:30
キックオフ、プレ会議:DIJ フォーラム

コルネリウス ヘルシュタット, ハンブルク工科大学技術・イノべーションマネージメント研究科(TUHH)教授

プロジェクト

シルバーマーケット現象 ― 人口動態変化の時代におけるビジネスチャンスと企業責任

日本のシニア向け広告

人口動態変化のチャレンジ