東アジア諸国の企業経営とぐろーばリゼーション (Globalisierung und Unternehmensführung in ostasiatischen Ländern)

 第2次世界大戦後まもなくの1950年の世界の人口は２５億人であり、それから約半世紀後の2003年の人口は６３億人であり、倍以上に上がっている。いわゆる「人口の爆発」の現象である。この人口の増加に対して、北米や西ヨーロッパの人口の割合は、その半世紀の間に32％から20％以下に低下した。他方、人口の増加に最も影響があったのがアジアであり、14億人から38億人へと増加した。
　また、世界のGDPにおける構成比でみても、1990 年では、日本は14％、米国27％、EU15カ国25％、日本を除く東アジア（NIEs，ASEAN，中国の合計）5％であったのが、2020年の推計では、日本10％、米国19％、EU15カ国19％であるが、東アジアは16％という予測もある。
　さらに、日本の貿易に関して言えば、輸出では輸出全体の5割弱が、輸入では輸入全体の4割強が東アジアとの貿易取引で占められるようになっている。日本企業の東アジアへの直接投資の増加に伴い配当収入も増えるなど、東アジアとの相互依存関係が深まっている。
　こうした状況の中で、20世紀の末頃から「21世紀はアジアの時代」というフレーズが使われたし、日本だけではなく、世界がアジアに注目しだしたのである。アジアに関する文献も、概観不可能のほど急速に蓄積されてきた。我々もまた、「企業経営」を中心にアジアを見ようとするものである。
　本書は東アジア諸国の企業経営を比較しようと目指した六名からなる研究チームの成果である。しかし成果的には、日本の企業経営を念頭に置きながら、中国・韓国・米国そしてドイツの企業経営、さらにWTO（世界貿易機関）やFTA（自由貿易協定）などの経済分析を含むものとたった。「東アジア諸国」という割には若干、対象国が少ないが、それでも一応主要国をカバーしており、また企業経営という研究対象の性格とそれにまつわる経済のグロバリゼーションという時代の変化を反映したものになった。

 
大西　昭生/　 Akio Ōnishi
中国進出企業の動向　－　WTO加盟前後の比較
Recent Developments of Companies Penetrating the Chinese Market – Before and After the WTO Accession
Neueste Entwicklungen bei Unternehmensengagements in China – Vor und nach dem WTO-Beitritt
S. 1-51.

アンドレアス・メルケ/　 Andreas Moerke
ドイツと日本における自動車および自動車部品産業の国際化戦略　－　中国を例に
Internationalization Strategies of the German and Japanese Automotive and Supplier Industries – the Example of China
Internationalisierungsstrategien der deutschen und japanischen Automobil- und Zulieferindustrie am Beispiel Chinas
S. 53-85

季　遠明/　 Enmai Li
ソフトウエア経営管理
Software Business Management
Unternehmensführung mit Software
S. 87-113

長谷川　正/　 Tadashi Hasegawa
中国の社会構造と企業経営
Social Structure and Enterprise Management in China
Gesellschaftsstruktur und Unternehmensführung in China
S. 115-146

倉田　致知/　 Yukitsugu Kurata
アメリカにおけるHRM (Human Resource Management) の展開　－　HR部分の役割・評価・課題を中心にして
The Evolution of the American Human Resource Management – On the Function, Appraisal and Tasks of the HR Division
Die Entstehung des amerikanischen Personalwesens – zu Rolle, Bewertung und Aufgaben der Personalabteilung
S. 147-194

坂本　信雄/　 Nobuo Sakamoto
東アジアの経済提携
Economic Partnerships in East Asia
Wirtschaftsbündnisse in Ostasien
S. 195-235